Makerコミュニティの次なる冒険
June 22, 2021
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3月中旬に資本市場と暗号通貨市場の深刻な低迷が起こり、MakerプロトコルとMakerガバナンス・コミュニティに試練が立ちはだかりました。Maker有権者がシステムを管理しているMakerガバナンスは、外部がほぼ壊滅的な状況の中、協力しあって完全に分散化された形でMakerシステムを査定および管理しました。
以下の情報では、市場で起こったことの背景について説明し、それによるMakerへの影響、ガバナンスの迅速な対応および今回の経験から得られた重要な考察について詳述していきます。
コロナウイルスと原油価格競争を取り巻く不安定な状況により、2月20日頃から資本市場の深刻な低迷がもたらされました。資本市場での価格急落によって、3月12日から13日にかけて36時間の間に、最終的には資本市場と暗号通貨市場が両方とも完全に崩壊するに至りました。
3月12日のETH市場動向(提供:Ethereum Price)
この崩壊により、ETH、BTCおよび暗号市場全般の価値の50%以上が失われました。イーサリアム・ブロックチェーン上でトランザクションが爆発し、それによってネットワークの混雑が引き起こされ、ガス価格が大幅に急上昇しました。
3月12~13日のガス価格急上昇
ネットワークの混雑とガス価格の高騰によりトランザクションに遅れが生じ、多くの場合トランザクションができませんでした。これらの問題が未曾有の資産価格の下落と共に、Maker Vault所有者、キーパーおよび流動性プールの隙を突いてきました。担保価格のデータソースであるオラクルは正常に作動しましたが、他と同様の遅延の影響を受けました。上記の状況の結果、多数のオークションが引き起こされ、それらオークションのうちの一部はゼロ以上の小数の入札を提出した入札者によって落札されました(「ゼロ入札者」が「ゼロ入札」を提出)。
Vault所有者は、Makerプロトコルが与えている1時間の猶予の間、担保を追加しようとした、またはVaultにDaiを返却しようとした際に、ガス価格の高騰とトランザクションの遅延に苦しみました。
キーパーもまた多くの面で苦労しました。市場崩壊の最中には、4つのキーパーが複数のボットを稼働していました。キーパーのボットのいくつかはDaiの流動性への迅速なアクセスが困難であった一方で、全てのオークションには参加することが不可能であったキーパーの「ボット」もありました。流動性のあるキーパーは、異例の数のオークションに直面しました。このようなキーパーはオークションに参加することはできたものの、流動性が急激に消費されたため、担保をDaiに戻してさらなるオークションに参加するには十分な時間が全くありませんでした。
何時間にもわたりキーパーの入札能力に影響を与えた今回の出来事の最中に、Maker Foundationはキーパーのボットを一つ稼働していましたが、そのボットはネットワークの極度な混雑によって増幅された技術的問題に直面しました。キーパーが最終的にDaiの流動性を使い果たし、さらなるDaiを調達するまで数時間の間入札ができなかった間に、その他の2つのボットがゼロ入札を提出しました。
事前のDai市場活動と関連した暗号通貨市場の急激な下落は、Daiの流動性に重大な影響を与えました。その結果、取引所、とりわけ中央集権的取引所が唯一の流動性供給源でした。それでもなお、中央集権的取引所もネットワークの混雑とキーパーへのおよびキーパーからの資産移動の遅延に悩まされたので、流動性にアクセスすることは難しかったです。
3月12日までの期間に、そして3月12日当日に起こった出来事は、エコシステム全体のDai不足を引き起こし、その結果Daiの米ドルへのソフトペッグ維持が困難になりました。3月12日以前には市場全体でDaiの需要が高まっていましたが、3月12日の市場の広範囲に及んだ出来事により、この状況はさらに悪化しました。その結果、Daiの市場価格は急上昇しました。例えば、TrendingViewでCoinbaseを見てみると、3月12日のある時点でDaiは1.126447ドルという高価格で取引されていることが分かります。
3月12日のある時点で1.12644ドルという高価格で取引されているDai(出典: TradingView)
オラクルもネットワーク上のその他全員と同様の遅延の影響を受け、その結果価格のアップデートが遅れました。Vault所有者の観点からみると、この影響によって担保を増加させる、またはDaiを購入してVaultに戻す時間が与えられたので、プラスに作用しました。 それに加えてオラクルの価格が遅延したことで、キーパーは流動性にアクセスし、その後のオークションの波に備えるための時間を追加で得ることができました。
前例のない担保価格の下落により、約1,200のVaultのオークションが引き起こされました。ネットワークの混雑と流動性の不足を考慮すると、十分な量のDaiまたは引き起こされた4,447のオークション全てに参加する能力がキーパーにはありませんでした。そのため、通常の市況で予測されているようにゼロ入札を止めることができず、その結果多くのゼロ入札者の落札が可能になってしまいました。キーパーは最終的には流動性を得てキャパシティを拡大し、混雑を回避してその後のゼロ入札を阻止することができました。これによってオークションでの競争力が回復しました。
この出来事以降、ゼロ入札はシステムへの組織的な攻撃またはハッキングであると推測する人もいます。現時点では、この説を支持または断定的に否定できる十分な証拠が揃っていません。
Makerプロトコルは透明で誰でもアクセス可能です。イーサリアム・ブロックチェーンに由来するこの特性により、コミュニティとMakerガバナンスは迅速に特定の出来事を認識し、それらに決断力を持って対応することができます。
コミュニティは、Makerガバナンス・フォーラムやRocket.chatで協力して市場崩壊と最善の対処方法について話し合いました。MKR有権者はまず初めに、オークションのパラメータが当面の間イーサリアム・ブロックチェーンの運用能力に適応するように調整を行うためのエグゼクティブ投票を可決することで対応しました。その後、Daiが目標価格の1ドルを上回ったことに対するリスクパラメータを調整するための投票が行われました。次にガバナンスは、多様性とさらなる流動性の供給源を提供するために、暗号市場とは相関関係のない担保タイプの追加を提案しました。エグゼクティブ投票の結果、USDCが担保として追加されました。
3月12~13日のゼロ入札の件により、担保オークションの不足額が約540万Daiを超える事態に陥りました。Makerプロトコルのデザインに従って、MKR有権者はMKRの希薄化を行うことで不足分を賄います。Vaultがオークションにかけられた際に、担保オークションでVaultの未払いのDaiを支払うための十分なDaiが調達できない場合は、債務オークションを通じてMakerプロトコルが自動的にMKRを発行し、MKRの価値を希薄します。このリスクがあるので、MKR有権者は責任を持って管理をするよう推奨されています。
したがってMakerプロトコルは、一連のMKR債務オークションを作成し、それを完了させることでシステムの資本を再構成しました。3月29日の段階では20,980のMKRがオークションにかけられ、530万のDaiを調達しました。
500万を超えるシステムの債務を指摘したフォーラムのディスカッション
約1,200のMaker Vaultが担保不足になり、清算されました。上記のように、Makerコミュニティは現在、ゼロ入札の状況とその結果として生じた清算について議論しています。コミュニティは最終的に、清算されたVaultに関する課題にどう対処するかを決定します。ガバナンス・フォーラムでの議論やMakerの様々なソーシャルメディア・プラットフォームをフォローすることをお勧めします。
困難な外部の混乱を乗り切るために利用可能な、明確で組織化されたシステムのプロセスを使用したMakerガバナンスの人力とシステムの回復力が試されました。良かったことに、Makerガバナンスが迅速に決断力とシステムが機能するという確信を持って行動を起こしました。そしてコミュニティもシステムも両方ともこの経験によってより強力なものになりました。以下が私たちが学んだ教訓です。
Maker Foundationの目標はMakerDAOを築き上げ、Makerエコシステムの発展と安定性を確かなものにすることです。Foundationは以下の優先事項に従い、DAOを発展および強化させ、完全に分散化されたガバナンスを育成することを約束しています。
Maker有権者であるまたはMaker有権者になることを考えている場合は、有権者オンボーディング・ガイドやガバナンスとリスクの概要をAwesome MakerDAOからご覧ください。
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