投票知識をつける:Dai市場を分析するための4つのリソース

April 27, 2021

こちらのブログは、Makerの三部作、「投票知識をつける(Informed Voting)」シリーズの第二部であり、MakerDAOガバナンスのコミュニティ投票をサポートするのに最適なツールを取り上げています。第一部はこちらからご覧ください。

DaiおよびMakerプロトコルの健全性が維持できるどうかは、一部には、MKRトークン保有者で構成されたグローバルなコミュニティによるガバナンスが、適切かどうかに懸かっています。

Makerの投票者は、意思決定の判断材料として、事実およびデータに基づいた幅広い資料を探しています。これらの資料には、新規担保資産の提案および承認から、安定化手数料および債務上限の設定に至るまで、プロトコルおよびDAOの主要な側面を全てカバーしたウェブサイトやドキュメントなどがあります。

「投票知識をつける」シリーズの最初の投稿「投票知識をつける:MakerDAOガバナンスの意思決定をサポートする4つの重要ツール」では、Makerでの投票における背景や文脈を伝える4つのリソースを取り上げました。そのうちの一つが、現在のガバナンス調査およびエグゼクティブ投票のステータスを閲覧し、ガバナンス・アクティビティの履歴を分析できる新規ツール、MCD投票トラッカーでした。この記事では、取引所の情報を収集し、Maker有権者がDaiの動向を追う手助けとなる4つのリソースを紹介します。 

Dai市場の可視化する4つのツール

暗号通貨取引所の情報は自由に入手可能です。例えば、誰でもいつでも簡単にDaiの価格を確認できます。Daiのソフトペッグを維持するために、コミュニティがどのような行動をとるのかは、市場の需給メカニズムの影響を受けているため、市場動向を観察および確認するための簡単なツールへアクセスできるということは、MKR保有者にとって非常に重要です。そのため、Makerコミュニティのメンバーは、様々な取引所や期間区分にあるDaiを分析できる、誰でも利用可能なウェブサイトを活用しています。

1. Dai.stablecoin.science 

Dai.stablecoin.scienceでは、膨大な量のデータを情報量豊富なチャートで表しています。このチャートでは、24時間、1週間、30日、90日という4つの期間における、主要中央集権的取引所および分散型取引所のDai平均価格を表示しています(データはヨーロッパ式に表示、日/月)。ユーザーは、CSVファイルをダウンロード(30日および90日間のアクティビティのみ)することにより、タイムスタンプ、ペア(ETH-DAI)、(ETHの)量、およびDaiで表したETH価格など、全てのトレードに関するさらなる詳細情報も入手できます。

各チャートのピンクのドットは、Daiの最大市場1であるETHとDaiの取引規模を、Daiの様々な価格において時系列で表示しています。色の濃いドットは、アグリゲータなどの他のプラットフォームを経由している取引所でのトレードを示しています。

Dai.stablecoin.science is a tool to help Maker governance analyze Dai markets.
約1ヶ月間のDai動向の集約

dai.stablecoin.scienceは、Maker投票者に正確なDai動向を伝えているだけでなく、開発者のさらなるリソース作成を可能にする、主要な基礎的構成要素となっています。その例の一つが、以下になります。

2. Dai.descipher.io

Dai.descipher.ioでは、Dai.stablecoin.scienceのデータを解析することにより、任意の期間内におけるDaiのVWAP2(売買高加重平均価格)を取引所ごとに表しているヒストグラムを作り出しています。ユーザーは、価格データを1セントまたは10分の1セント単位で表示することができます。

Dai.descipher.io helps Maker voters analyze info on Dai market trading volumes.
取引所毎のDaiのトレード量を10分の1セント単位で表しているDai.descipher.io

VWAPでは、時間と共に変化していく価格を表示するのではなく、ある期間における全ての取引データを、一つの図に表しています。このようにして取引所毎のデータを集積し表示することにより、ユーザーは、任意の期間においてDaiがペッグに近い状態でトレードされているかどうか、および価格の乖離は特定のプラットフォームと関連性があるかどうかを確認できます。

3. Curve Finance

Curve Financeとは、主にステーブルコインの効率的な取引を目的に設計された、自動マーケットメーカー(AMM)です。Curve Financeでは、ユーザーは、他のDEXよりも比較的少ないスリッページ(予期している価格と実際の取引実行価格の差3)で、ステーブルコインをトレードできます。他のAMMとは異なるアルゴリズムまたは価格曲線を採用することにより、これが可能になっています。

Curveは、Makerコミュニティが作成したリソースではありませんが、最大級のDeFiプラットフォームの一つであり、執筆時点では、その流動性プールに約4億のDaiがロックされています4。そしてDeFiの構成可能性により、裏では他のDEX、アグリゲータおよびdappsに接続されています。そのためCurveは、DeFi空間のどこかで大量のDaiが売買された場合に、その価格がどれほどペッグから乖離するのかを示す、非常に便利な指標となっています。

2021年4月14日8時20分(UTC)に撮られた以下のスクリーンショットでは、Curveでは1億Daiを、0.9993ドルの為替レートで、0.07%のスリッページでUSDCとトレードできるということを示しています。

Maker governance can use Curve Finance to gauge Dai liquidity when analyzing markets.

Maker保有者は、現在のDaiの流動性を測るための判断基準としてCurveを活用し、急激な需要または共有の増加が、どのようにDai価格に影響を与えるのかを見極めることができます。

4. Block Analitica

現在開発中のMakerコミュニティが作成したリソース、Block Analiticaでは、Daiの流動性を可視化しています。このツールでは、DeFi分野にある取引所および流動性プールに接続されている人気のアグリゲータ1inchからデータを取得し、様々な量のDaiがUSDCに売られた場合、1週間前の同日と比較して、どのくらいのスリッページが発生しうるかを表示しています。

以下のスクリーンショットでは、2021年4月14日に2億DaiをUSDCに交換した場合、約0.05%のスリッページが発生する可能性があることを示しています。つまり、このトランザクションでは、約10万ドルの損失が出る可能性があることを意味しています。


Block Analiticaでは、多量のDaiをUSDCに交換する際の効率性を可視化しています。

Block Analiticaでは、特定の約定率に達する前にトレードすべきDaiの量(および各担保資産の量)を示している計算機、ならびにMakerに特化したその他のツールも提供しています。

最新データを駆使した投票 

MakerDAOのガバナンス・コミュニティは、Daiの価格を維持および安定させるために、Daiの需給に影響を与えるインセンティブを、投票で変更することができます。正確かつ最新のDai市場情報にアクセスすることは、情報に基づいた投票を行うには、非常に重要です。Maker公開ガバナンスの詳細については、MakerDAOフォーラムで交わされている多数の議論に参加してみてください。

「投票知識をつける」シリーズの最終章では、Makerプロトコルで適切なDaiの担保を維持するための仕様、Maker Vault清算を紹介します。

April 27, 2021