複数担保型Dai(MCD)におけるDai預金金利についてのアップデート

2019年9月18日

Dai預金金利(DSR)は、複数担保型Dai(MCD)において最も期待される機能の1つです。はじめに、DSRによってDaiは他のステーブルコインからより一層差別化されます。 Dai保有者に安定した分散化通貨を提供するだけでなく、MCDではDaiを保有するだけで、金利を得るオプションも利用できます。Dai保有者なら誰でも、スマートコントラクトでDaiをロックして、Daiを獲得することができます。次に、Daiの入出金は、Maker Foundationが提供する簡単に使えるdappを介して行われます。そして最後に、DSRは、Daiの需要を刺激することにより、Daiの米ドルに対するソフトペッグを維持する役割を果たします。

Daiをロックアップして金利を得る

MCDの開始時に、Daiの保有者は誰でもDaiをDSRのスマートコントラクトに預け、さらなるDaiを獲得することができます。 DSRは、暗号通貨の貯蓄口座だと考えてください。以下の図で示されているように、このプロセスは簡単です。

  1. Dai保有者は、自身のウォレットからDSRコントラクトにDaiを預け入れ、Daiをコントラクト上でロックします。
  2. ユーザーのDaiがDSRコントラクトにある間、Makerプロトコルは、Makerガバナンスが決定した変動する金利と等しい量のDaiを自動的に追加します。
  3. Dai保有者は、いつでも、その時点までに得た金利とともに、DSRからDaiのロックを解除できます。 Dai保有者は、常にDSRコントラクトにロックされているDaiの管理権を保持します。

Dai保有者が年利5%のDSRに100Dai預けたとすると、12ヶ月後に105Daiを引き出すことができます。

Dai保有者はDSR dappを使って簡単に入金や出金、または他の情報の確認をすることができます。以下のDSR用のdappのモックアップでは、ウォレット内にあるDaiの合計金額(512,534 Dai)とDSRにあるDaiの金額(100.05 Dai)が見て取れます。

ユーザーはdapp内にて「預金」のタブで金額を指定し、「Daiを預金する」のボタンを押し、トランザクションに署名するだけで簡単にDaiを追加できます。同様に、「出金」タブで金額を指定し、「Daiを出金する」のボタンを押し、トランザクションに署名するだけでDSR dappから自身のウォレットにDaiを返金することも可能です。

DSR dappのモックアップ

DSRが成功するかどうかは、Makerプロトコルが持続できる魅力的な市場レートにかかっています。それではDSRのガバナンスとリスク面について見てみましょう。

ガバナンスとリスク

DSRは、主にDaiのUSドルに対するソフトペッグの維持するツールとして、MakerDAOガバナンスの中心的役割を果たすことになります。これまでの単一担保型DaiではDaiのペッグを維持するための手段として安定化手数料が使われてきました。Makerガバナンスが決定している安定化手数料の変更によって、CDP所有者はDaiを借りたり払い戻したりするように促され、その結果、Dai価格を調整し続けて均衡にします。Daiの発行を対象として、このパラメーターはDaiの供給面に影響を与えます。

一方DSRは、Makerガバナンスにもう一つのツールを提供します。DSRはDai保有者の行動(CDP所有者の行動とは対象的)に影響を与えるので、MakerガバナンスはDaiの需要面に影響を及ぼすことができます。ユーザーはDSRでさらにどのくらいのDaiを得ることができるかに基づいて、公開市場でDaiを売買するように促されます。Daiの価格が低すぎる場合には、預金金利が引き上げられ、ユーザーはDaiを購入するよう奨励され、その結果Daiの価格が上がりペッグに近くなります。Daiの価格が高すぎる場合には、過剰なDaiの需要を軽減するために預金金利が引き下げられ、価格がペッグに近づきます。Makerガバナンスは預金金利を調整するにあたり、このダイナミックを認識しておくべきです。

誰がDSRを払うのか?

DSRの機能的な設計目標は、余分なDaiがどこからともなく発行されないようにすることです。(つまりDSR用に発行されるDaiも、きちんと担保によって裏付けられているようにすることです。)これは、DSRはエコシステム内の一部の関係者が負担しなければならない費用であるため、Makerガバナンスは最終的には誰がその費用を負担を背負い、費用を賄うかを考慮すべきということを意味します。

会計面で言うと、DSRから得られたDaiは、集められた安定化手数料を記録しておく際に使われる項目と同じところに記録されます。つまり、DSR用に発行されたDaiは、サープラスオークション用に収集された安定化手数料の調整的相殺として記録されます。安定化手数料の合計額がDSR用に発行されたDaiの合計額をカバーできない場合には、その差額は不良債権として記録され、そのコストをカバーするためにMKRが発行されます。

MKR保有者がDSRの最終的な費用を負担する一方で、CDP所有者は、安定化手数料と同等の増加を通じて、実質的にDSRの費用を支払うと考えられてきました。安定化手数料は、概念上、二つの要素から成り立つべきです。1) CDP所有者からMKR保有者への価値移転である担保固有のリスクプレミアムと、2) CDP所有者からDai保有者への価値移転であるDSR調整の二つです。本質的にはCDP所有者は、二つの異なるエコシステムの関係者を、つまり担保リスクに対してMKR保有者を、Daiの不安定性に対してDai保有者を補償します。

担保タイプについて、他にも考慮すべき複雑な点があります。具体的には、DSRによる安定化手数料の全体的な増加の結果、いくつかの担保タイプを含むことが実行不可能になるかもしれません。例えば、DSRが5%に設定されていた場合(それにより全ての担保タイプの基本安定化手数料が5%になる)、必要な資本コストが低い特定の担保資産を含めることは、もはや経済的ではありません。例えば、担保は、5%以上であると競争力を維持するのが難しい場合があります。

これらの決定を当然の結論とし、Makerガバナンスは以下の問題について考えなければなりません。

これらは、データ分析の長い歴史の中においても難しい問題です。結果的に、暫定リスクチームは、頑丈な解決策が考案および実施されるまで、DSR調整全額が、包括的に担保タイプの全てには反映されないようにすることを提案します。代わりに、安定化手数料に反映されている預金金利分によって、全ての担保パートナーがDaiクレジット・システムに包括されるようにするべきです。不足分は、担保型エコシステム繁栄のためにMKR保有者が負担するコストとなります。

例えば、資本コストが3%、5%、10%の3つの担保資産プールがあるとします。市場が求めているDSR調整が5%だと仮定し、そのコストは安定化手数料に回されるとすると、最初の担保はプロトコルから除外されます。したがって、Makerガバナンスは、コストの3%だけを安定化手数料に回し、残った2%を負担することを考慮しなければなりません。

他の分散化金融プラットフォームとの比較

Dai預金金利が、より広範囲な分散化金融プラットフォームにおいて、Dai保有者へもう一つの貯蓄手段を提供するにあたって、他の分散化金融プラットフォームと比較したリスクプロファイルを理解しておくことが重要です。DSRを理解するために主要となる点は、DSRでは通常のDaiを保有しているのと全く同じリスクがあるという点です。金融機関(カウンターパーティー)が利子を発行するために預金を貸し出す集権型貯蓄商品とは異なり、Daiがプログラムで発行されており、通常のDaiと同じ安全策、つまりMKRの希薄化によって保証されているので、DSRにはカウンターパーティー・リスクがありません。その結果、DSRは定義上もっともリスクの少ないDaiの貯蓄手段となります。分散化金融エコシステム内のより高いレートを提供しているの他の貯蓄手段では、より高いリスクの代償なしではこうすることができません。

DSRの初期値

MCDの開始に先立ち、Makerコミュニティは、ガバナンス投票を通してDai預金金利の初期値を設定することができます。選択肢は暫定ガバナンスファシリテーターによって選ばれ、MakerDAOフォーラムでの意見をまとめるディスカッションに基づいています。レートがどうあるべきかやどのような指標(もしあった場合)を辿るべきかについて、たくさんの議論があることを我々は予想していますが、よりシンプルな試行錯誤のアプローチが良いかと思っています。ガバナンス投票により最初のパラメーターが選択された後、コミュニティはDSRが自然平衡に達するまで、迅速な反復的プロセスに備える必要があります。

最終的には、経験的データに基づいてDSRを決定することができます。モデルが発展していくにつれ、Makerガバナンスは包括的または担保固有のDSRの価値を得るのに必要なバランス効果の管理を始めることができます。

まとめ

Daiを保持している方は、トークンをロックアップして金利を得ることができます。MKRを保有している方は、MCDの開始に向けてDai預金金利の設定に参加できるよう準備しておいてください。

それまでの間、コミュニティ内の他の人がどう考えているかについて質問や興味がある場合は、ぜひ我々のMCDに関したブログ記事に目を通し、MakerDAOフォーラムの会話に参加してみてください。


2019年9月18日