Dai Statsガイド

December 18, 2020

2020年12月15日更新

このガイドでは、daistats.comを概説します。daistats.comは、Makerの元スマートコントラクト代表Mariano Contiが単独で作成しました。このサイトはリアルタイムで更新され、ユーザーは、Makerプロトコルのある瞬間における規模および健全性に関する有益な情報を得ることができます。

DeFiは常に変化しています。2020年Makerプロトコルでは、新規担保タイプ追加やDaiの総供給量10億突破など、多くのことが起こりました。Dai Statsのような資料は、凄まじいスピードで成長および発展するDeFiから遅れをとらずについていく手助けになります。

Daistats.comの重要指標説明

daistats.comの全ての指標について学ぶことは、Makerプロトコルの仕組みを知るための優良な導入部となっています。Dai Statsの多くの統計データは一目瞭然で分かりやすいですが、いくつかはその意味を説明する必要があります。早速始めてみましょう。

Total Daiでは、流通しているDaiの量(ユーザー、トレーダーおよび貯蓄者が利用できる流動量)、それに続いて現在発行できるDaiの最大量(債務上限)が示されています。

 Information about every key metric for the Maker Protocol is provided in the Guide to Dai Stats.
Daistats.comでは、承認された全ての担保タイプを含む、Makerプロトコルの重要指標全てを提供しています。

供給されているDaiは全て、担保資産から発行されておりており、その数は増え続けています。Dai Statsでは、各担保タイプについてそれぞれ3つの指標を出しています。

  1. ある担保から発行されたDaiの量、および現在その担保から発行できるDaiの最大量(その資産の債務上限)
  2. その担保タイプを裏付けにDaiを発行する際に、Vault所有者に対して課される安定化手数料
  3. Vaultにロックされているその資産の総額

担保タイプは、MKRトークン保有者が承認して初めて、Makerプロトコルへ追加されます。MKR保有者は、分散型ガバナンスプロセスを経て票を投じます。執筆時点では、Makerプロトコルは18の担保資産をサポートしています。

  • ETH:イーサリアムのネイティブコインで、Dai発行に最も利用されている担保です。
  • BAT:Braveブラウザのプロジェクトにおける報酬トークン。BATは、2019年11月の複数担保型Dai(MCD)ローンチ時からサポートされています。
  • USDC:規制金融機関の準備金として保有されている米ドルに裏付けられたステーブルコイン。USDCは、2020年3月にMakerガバナンスへ追加されました。
  • WBTC:カストディサービスBitGoで保有されているBTCに、1:1で裏付けられているラップドビットコイン。2020年5月に追加。
  • TUSD:TrustTokenが発行するドルに裏付けられている、規制に準拠したステーブルコイン。2020年6月に追加。
  • KNC:分散型取引所プロトコルKyber Networkの手数料支払いに使用されているトークン。2020年6月に追加。
  • ZRX:分散型取引所プロトコル0xのガバナンス・トークン。2020年6月に追加。ZRXはトレードの手数料支払いにも使用されています。
  • MANA:ブロックチェーン基盤のバーチャル世界Decentralandのネイティブ通貨。2020年7月に追加。
  • PAX:Paxos Trust Companyが保有する米ドルに裏付けられた、規制に準拠したステーブルコインPaxos Standardトークン。2020年9月に追加。
  • USDT:Tetherが保有する米ドルおよびその他の資産に裏付けられたステーブルコインTether USD。2020年9月に追加。
  • COMP:レンディング・プロトコルCoumpound.Financeのガバナンス・トークン。2020年9月に追加。
  • LRC:zkRollupプロトコルを利用した、高度なスケーラビリティを持つ取引所および支払いアプリケーションLoopringのネイティブ・トークン。2020年9月に追加。
  • LINK:分散型オラクルネットワークChainlinkの支払い用トークン。2020年9月に追加。
  • BAL:分散型ポートフォリオ・マネージャーおよび流動性提供プロトコルBalancerのガバナンストークン。2020年10月に追加。
  • YFI:DeFiアグリゲータ・システムYearn Financeのガバナンス・トークン。2020年10月に追加。
  • GUSD:米ドルに裏付けられており、規制に準拠しているステーブルコインGemini dollar。Gemini Trust Companyが発行している。2020年11月に追加。
  • UNI:分散型取引所Uniswapのガバナンス・トークン。2020年12月に追加。
  • RENBTC:パーミッションレスな相互運用ネットワークRenVMを介してロックされ、ビットコインに1:1で裏付けられているイーサリアム・トークン。2020年12月に追加。

担保タイプの中には、AおよびBといった2つの種類を持つものもあります。これによりユーザーは、異なるリスクパラメータ(例:債務上限、安定化手数料、清算率、および清算ペナルティなど)を持つ資産から、Daiを発行することができます。例えば、執筆時点において、

  • ETH-Aでは、安定化手数料2%、清算率150%で、最大5億9,000万Daiまで発行することができます。
  • ETH-Bでは、安定化手数料4%、清算率130%で、最大1,500万Daiまで発行できます。

ETH-Aでは、手数料が低く多くの流動性を提供できる一方、ETH-Bの手数料は高いですがその代わり清算率が低くなっています。これにより、ユーザーはETH-Aで発行が許容されている以上の量のDaiを、自身の担保から発行できるようになりますが、清算のリスクが高くなります。

Dai(ERC20)Supply(Dai供給量)とは、VaultやDai貯蓄率(DSR)コントラクト(下記参照)にロックされておらず、自由に流通している(ウォレットや取引所で保有されている)Daiの量を表しています。

各担保タイプでは、Current market prices(現在の市場価格)が表示されています。ほとんど全ての担保資産の価格は、オラクル・セキュリティ・モジュール(OSM; Oracle Security Module)を介した分散型価格フィードから取得されています。OSMには、1時間遅延機能が組み込まれているため、オラクルへの直接攻撃を含む様々なリスクから、システムを保護できます。

執筆時点で担保タイプとしてサポートされている規制に準拠した4つのステーブルコイン(USDC TUSD PAXおよびGUSD)の価格は、常に1ドルです。これら4つの資産を担保としてDaiを発行したVaultは、現在清算することができません。5つ目のステーブルコインUSDTの価格は、OSMが提供しています。USDTを裏付けている資産について市場で得られる情報が少ないため、その市場価格はOSMから取得されています。またMKR有権者は、USDTのVaultの清算を承認しました。

The prices shown in the Guide to Dai Stats for stablecoin collateral assets are fixed at $1.
USDC、TUSD、PAXおよびGUSDの価格は常に1ドルです。

Dai in DSR(DSRにあるDai)とは、現在Dai貯蓄率(DSR)コントラクトにロックされているDaiの量(絶対数および全体に対するパーセンテージで表示)です。DSRがゼロ以上の場合、ユーザーは手持ちのDaiでさらにDaiを獲得し、手数料負担なしでいつでもDaiを引き出すことができます。Pie in DSR(DSRにあるPie)とは、Dai貯蓄率のコア部分「Pot」としても知られているDai貯蓄率コントラクトに、ユーザーが直接預け入れたDaiの量です。DSRのDai総量には、ユーザーがPotで増やしたDaiも含まれています。

Dai Savings Rate(Dai貯蓄率)とは、Makerガバナンスが設定する変動金利レートです。Last Drip(最後のドリップ)では、DSRにあるDaiの利益が最後に支払われた時を表しています。Dripは頻繁に起こるため、ユーザーは自身のDaiがDai貯蓄率を得ている瞬間をリアルタイムで見ることができます。

Debt Available to Heal (Dai)(Healに利用可能な債務)とは、システム余剰(下記参照)を利用して減少(Heal=治す)することができるシステム上の債務です。Vaultに十分な担保がない場合、Vaultは自動的に清算の対象となります。このような清算対象のVaultから発行されたDaiは、担保オークションを通じて取り戻されます。このプロセスは、即座に引き起こされますが、完了には約1週間かかります。そのため、システムには一時的な債務が生じます。キーパーは、利用可能であれば、システム余剰からDaiを支出することにより、この債務を「Heal」(治す)ことが可能です。Debt Buffer(債務バッファ)は、現在Makerガバナンスにより5万に設定されており、これにより債務オークション(下記参照)が引き起こされるまでに少し猶予が与えられています。

System Surplus(システム余剰)とは、Makerガバナンスが設定した安定化手数料および清算手数料などの、システム手数料から発生したDaiの量です。Surplus Buffer(余剰バッファ)とは、万が一の事態に備えて保有されているDaiのことです。余剰バッファの量もMakerガバナンスが設定しており、現在は400万となっています。余剰バッファが設定された量を上回ると、超過分のDaiは全て1万単位のロットで余剰オークションに出され、MKRで支払われます。余剰オークションでシステムへ支払われたMKRはバーン(焼却)されるため、総供給量が減少します。余剰バッファが401万ドルに達した場合、Vowと呼ばれるシステム・コントラクトに「heal」トランザクションを送ることにより、誰でもオークションを開始できます。(システム余剰、安定化手数料、およびMKRバーンレートに関する重要指標は、makerburn.comなどのその他のコミュニティサイトで確認できます。)

A resource in addition to the Guide to Dai Stats, Makerburn.com provides key stats about the Maker Protocol.
Makerburn.comは、有益な資料であり、システム手数料蓄積に関する重要指標を提供しています。

Vaults Opened(開設されたVault)では、承認された担保タイプを裏付けとしてDaiを発行するために、今までに作成されたVaultの数を表しています。最初のVaultは、2019年11月のMCDローンチ時に開設されました。

各担保タイプの(Flip) Auctions(Flipオークション)指標は、清算されたVaultのDaiを取り戻すために行われたオークション数を反映しています。(Liquidation 1.2アップデートの一環として、Flipオークションをコントロールしているスマートコントラクトが変更された2020年9月に、数は一度リセットされてゼロに戻っています。)

Flip Auctions, described in the Guide to Dai Stats, recover Dai generated by Vaults that become undercollateralized.
Flipオークションでは、担保不足に陥ったVaultから発行されたDaiを取り戻します。

Dai Surplus (Flap) Auctions(Dai余剰(Flap)オークション)指標では、行われた余剰オークション数を反映しています。Till Next Flap Possible(次のFlapまでの可能性)では、次のFlapオークションが引き起こされるまでに、あとどのくらいのDaiが集まらなければいけないのかを示しています。

Debt (Flop) Auctions(債務(Flop)オークション)とは、担保オークションで清算されたVaultの未払い債務を回収できなかった際に、システムがプログラムで自動的にMKRを発行およびオークションで売却し、プロトコルの不足分を補った回数です。これは、突然かつ急激な担保価格下落が起きた場合、または担保オークション参加入札者が不十分だった場合に引き起こされます。システム債務をカバーするのに十分なシステム余剰がない場合、債務(またはFlop)オークションが引き起こされ、このプロセスで集められたDaiは、未払い債務の支払いに利用されます。(Liquidations 1.1アップグレードの一環として、Flopオークションをコントロールしているスマートコントラクトが変更された2020年7月に、数は一度リセットされてゼロに戻っています。)債務オークションでは、MKRの総供給量が増加します。MKR Supply(MKR供給量)とは、現在流通しているMKRトークンの総量です。

Chai Supply(Chai供給量)とは、流通しているChai の量です。Chaiとは、コミュニティが作成したDaiのプロダクトです。

Dai in Oasis Dex(Oasis DexにあるDai)とは、分散型トークン取引所Oasis.appで、交換に利用できるDaiの量です。

Dai in Uniswap V2 (Dai/ETH)(Uniswap V2にあるDai(Dai/ETH))とは、分散型暗号通貨トレードプラットフォームUniswapのDai/ETH流動性プールにロックされているDaiの量です。

最後に、daistats.comでは、Makerエコシステムの主要トークンのブロックチェーン上のそれぞれのコントラクト・アドレスも表示しています。コントラクトには、ブロックチェーン上でのトランザクションのルールが含まれている一方、独自の一連の文字で表されるコントラクト・アドレスは、コントラクトが存在している場所です。ETHは、イーサリアムのネイティブコインなため、ETH自体にコントラクト・アドレスはありません。

The contract addresses for the main tokens in the Protocol are shared in the Guide to Dai Stats.
Makerプロトコルの主要トークンのコントラクトアドレス

Makerの内なる知識を解き放つ

Makerプロトコルの様々な指標や統計を調べ上げることは、分散型Daiステーブルコインのメカニズムや様々な用途を理解するのにとても役立ちます。これはまた、効果的にMakerの公開ガバナンス・プロセスに関与するには、必要不可欠です。

Makerプロトコルおよび幅広いMakerエコシステムのたくさんの情報を提供しているコミュニティ・ガバナンスのツールをチェックしてみてください。

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December 18, 2020