Daiバックストップ・シンジケート:進行中の分散化

December 15, 2020

Makerプロトコルは、MakerDAOの分散型Daiステーブルコイン、Vault、オラクルおよびガバナンス、ならびに分散型金融(DeFi)エコシステムの基盤となっています。プロトコルを支える信頼性の高いブロックチェーン技術およびスマートコントラクトが、MakerコミュニティおよびDeFiムーブメントにとって不可欠である一方で、これら両方に深く関わっている熱心な人間も同様に重要になります。そしてこのことは今年3月の市場での出来事を受け、今まで以上に明白かつ重要になりました。

3月12日にイーサリアム(ETH)の価格が大暴落し、それによってDaiの極端な不足に繋がる一連の出来事が起こり、Makerのグローバル・コミュニティ内で大きな懸念が生まれました。ETH価格暴落から24時間以内に、可能な解決策を提示しコミュニティをまとめることを目的として、後にDaiバックストップ・シンジケートと名乗ることになるグループが自主的に組織されました。


Daiバックストップ・シンジケート:コミュニティ主体の保護手段の可能性

3月12日の出来事は、Makerコミュニティの成長を促してくれました。金融業界全体では、トレーダーが資金の安全な避難先として米ドルを求めたため、ほぼ全ての資産クラスで激しい売りが生じました。その結果、Makerプロトコルおよびさらに広範囲に渡るDeFiエコシステムに、以下のような直接的および間接的な影響が生じました。

  • Maker Vaultの担保価値の急落。
  • イーサリアム・ネットワークの極度な混雑および遅延。
  • 中央集権的取引所へのアクセスの限界。
  • Daiの流動性へのアクセスの減少。

最終的には、2つの第三者オークション・キーパーの「0入札」戦略によって、Maker Vaultは数百万ドルの担保不足に陥りました。

Makerコミュニティは、すぐにMakerガバナンス・フォーラムやソーシャルメディアで一体となって、この出来事、原因および可能な解決策について話し合いました。3月13日にはDaiバックストップ・シンジケートと名乗るグループがMaker Foundationから独立して組織され、必要に応じてMakerプロトコルの赤字を解消するために、「MKRの最後の買い手」になることをTwitterで宣言しました。その後間もなくして、Dharmaの共同創設者でありCEOのブレンダン・フォースターが、献身的な参加者のリストをツイートしました。

翌日3月14日Maker Foundationは、プロトコルの資本を再構成するために、MakerDAOガバナンストークンであるMKRの債務オークションをすぐに開始することを発表しました。長い間コミュニティで議論されてきたMKR債務オークションの背後にある理由およびそのプロセスは、ホワイトペーパーに記載してあります。 

Makerの債務オークションには誰でも参加できる一方で、50,000Daiという最小入札額は、一部の個人にとっては手の届かない額となっています。十分な資本を持つ機関がすぐに興味を示したのと同時に、Makerコミュニティも参加の意向を表しました。Daiバックストップ・シンジケートはこれに対する解決策であり、スマートコントラクトを通じて小規模な参加者が入札できるようにするために結成されました。redditで説明されているように、Daiバックストップ・シンジケートの目標は、「MKR購入に利用できるDAIを最低でも500万用意する」ことでした。興味をお持ちの方は、少しの量のDAIでも役に立ち、またMKRへの協力な支持を表す手助けになります。 

突き詰めるとこの団体は、MKRオークションで「最後の買い手」になることを申し出ているだけでなく、Makerへの強力な支持を示し、最も重要なことにDai、そしてDeFiエコシステムへの強い信頼を表しているのでしょう。

Daiを支持するDeFi愛好家

Daiバックストップ・シンジケートは、商業的またはトレード機会として立ち上げられた訳ではありません。むしろこの団体のメンバーは、「MakerDAOおよびDaiが私達の分野の不可欠なインフラであると考えているDeFi愛好家」です。彼らは、彼らの助けなしにオークションが機能することを期待していましたが、Daiバックストップ・シンジケートは、コミュニティ・サポートの保険に似た、Makerプロトコルの防護ネットの作成に努めました。

Daiバックストップ・シンジケートからの入札なしにオークションは成功しましたが、この組織はこのような必要性が再度出てきた場合に備えて継続されています。今日、中国、イタリア、アルゼンチンおよびアメリカなどのDeFiコミュニティのメンバーが中心となり、合計129の組織がシンジケートを構成しています。

ブロックチェーン・セキュリティの市場リーダーによる監査

Daiバックストップ・シンジケートの背後にある中核的技術は、Daiの寄付金をプールし、オークションで1MKRに対して100Daiで入札するために使用されているスマートコントラクトです。いかなる額のDaiの寄付でも、落札時にはその割合に応じたMKRを受け取ることができます。

スマートコントラクトに何十万ドルも注ぎ込まれているので、当然セキュリティが非常に重要になってきます。 ありがたいことに、ブロックチェーン・セキュリティ会社のQuantstampがシンジケートのコントラクト監査を申し出、同時に独自のキーパーを稼働してスムーズなオークションが保証できるようサポートしてくれました。

「たった1DAIから始まり、『最後の買い手』を組織するためにDeFiコミュニティがこんなにも迅速に集結したのを見たことは、とても刺激的でした。これによって参加の障壁が取り除かれ、エコシステムの安定に役立ちました。これはコミュニティ・ガバナンスの本質の現れです。」とQuantstampのCEO、リチャード・マーは4月8日の告知で述べました。

さらにQuantstampはChainproofを通じて追加の保証を提供し、バックストップ・コントラクトの価値を保険にかけました。


Quantstampはコミュニティ・ガバナンスの価値を認識し、支援を提供してくれました。

コミュニティの多くの人が、Quantstampの迅速で有能なサポートに感謝しています。デプロイされたコントラクトの中で致命的なものは見つからなかったものの、将来の開発者のために改善案がいくつか提案されました。Quantstampは、この監査を一回限りのイベントではなく、継続的なプロセスとして考えるよう助言しています。DeFi領域が拡大し続けていくにつれて、バックストップのようにDeFiインフラを強化しDeFiを主流にする協力的な取り組みが増えていくことが予想されています。

Daiバックストップ・シンジケートから学ぶこと 

Daiバックストップ・シンジケートは、自発的かつ前例を見ないコミュニティ主導の新たな取り組みであり、草の根および分散型の組織化が、この分野での課題への取り組み、およびより優れた透明性の高い金融システムの作成に非常に効果的であるということを証明してくれました。そして重要なのは、このことはDeFiへの信頼育成、およびMakerの完全な分散化に向けた推進力強化も促しているということです。

DaiおよびMakerプロトコルのさらなる詳細については、ホワイトペーパーをご覧になり、MakerフォーラムおよびMaker Rocketchat Channelで議論に参加してみてください。

December 15, 2020