新しいブロックチェーンアプリはどのようにDeFiを使いやすくしているのか
July 2, 2021
こちらのコンテンツは情報提供のみを目的としており、法律、ビジネス、投資または税務に関するアドバイスとして信頼すべきではありません。
分散型金融(DeFi)ムーブメントの拡大により、多くのdappを支えるネットワークであるイーサリアムに、大きな負担が生じています。DeFiアクティビティが増加するにつれて、ユーザーがマイナーに支払うべきトランザクション手数料(ガス代)が、激しく上昇しています。このせいで、分散型アプリの利用は、一般的なユーザーにとって経済的ではなくなっています。例えば執筆時点において、単純なトークン送付には67ドル必要ですが、Yearn Vaultの開設となると、トランザクションに数百ドルかかります。
このガス代高騰問題は、いずれイーサリアム2.0により解決すると考えられています。しかし、複数の段階に分けられ、ネットワークの幅広い改善を要するこのアップグレードが完了するには、数年かかると言われています。それまでの間、ユーザーがガス代を節約するための方法が、いくつか存在しています。
イーサリアム・ブロックチェーンと関わる場合、どのような関わり方であれ、ユーザーはガス代を支払う必要があります。ガス代は、Gwei(10億Gwei=1ETH)というETHの単位で計測されます。トランザクションが複雑であればあるほど、その実行により多くのGweiが必要になります。イーサリアム・ウォレットの中には、トランザクションに支払うガス代に、制限をかけているものもありますが、各トランザクションの実行には、最低限必要なガス代が設けられています。例えば、単純なETHの送付に必要なガスリミットは21,000ユニット(単位)ですが、ERC20トークンの送付には65,000ユニット必要です1。DeFiアプリを使用したトランザクションでは、マイナーの処理がより複雑になるため、さらにコストがかかる可能性が高いです。
結論から言えば、DeFiを活用したい場合、ガス代を避ける方法はありませんが、支出を最小限に抑えるための方法はいくつか存在しています。
全てのトランザクションにおいてガス代が必要であり、トランザクションの種類に応じて、異なるガス代が課されています。積極的にDeFiを利用しているユーザーは、ガス代節約のために、可能な限り関連のあるトランザクションを、まとめてみた方がいいかもしれません。
例えば、アカウント1およびアカウント2という、二つのイーサリアム・アドレスを持っていたとします。それぞれのアカウントに、1,000ずつトークンが入っています。あなたはこれらのトークンを、新しくできたdappのVaultに入れ、金利を得たいと思っています。しかし、それぞれのアドレスで別々にこれを行なった場合、100万(各50万)ユニットのガス代がかかってしまいます。100万ユニットのガスとは、執筆時点のレートで、0.23ETH、つまり380ドルになります(※)。しかし、別々にVaultを開設するのではなく、アカウント2のトークンをアカウント1に送信し、2,000のトークンを全てまとめてVaultにロックすることにより、ガス代を節約することができます。後者の場合、56万5,000ユニットのガス、つまり215ドルしかかかりません。
同様に、毎週1,000トークンを購入し、Vaultにロックしたいと仮定します。各トランザクションには50万ユニットのガス、すなわち200ドルかかります。 この状況でガス代を節約するために、まずは少し計算してみましょう。あなたが購入する新規トークンが、その週に200ドル以上上昇しなかった場合、トークンのロックをもう少し待ってみた方が賢明かもしれません。
これらの戦略は非常にシンプルですが、見落としてしまいがちです。
(※)執筆時1ETH=1,655ドル
イーサリアム・ネットワークが休まることはありません。現在1秒間に15のトランザクションを処理していますが、この速さでは、十分でないこともあります。その結果、ネットワークの使用量が多い時には、保留中のトランザクションが多くなってしまいます。ネットワーク混雑時には、トランザクション処理が遅くなり、何時間も待たされた結果、トランザクションを完了できないこともあります。さらに酷いケースでは、マイナーがトランザクションの処理を開始したけれども、設定されたガスリミットが足りないことによりトランザクションが完了しなかった場合、そのトランザクションは失敗に終わる上に、マイナーへの手数料を支払わなければならない可能性もあります。ガス代の見積もりを間違えることは、暗号通貨ユーザーがよくやる間違いの一つです。
イーサリアムのトランザクション量、およびそれに伴うガス代は、特定の日、さらに言えば、特定の時間にピークに達します。急ぎでない場合、ネットワークが落ち着くのを待つことも、ガス代を節約するためには効果的な方法です。例えば、Vaultの開設または閉鎖なら待つことができるかもしれませんが、急を要するトレードのトランザクションは、待たない方がいいかもしれません。
Ethereum Priceなどのツールを利用することにより、ユーザーは、自身が居住している地域のタイムゾーンに沿った形で、一週間分のネットワーク・アクティビティを確認し、トランザクションを行うのに最適なタイミングを調べることができます。以下の表では、グリニッジ標準時間帯における過去1週間のガス代が表示されています。ここから、休日の方が平日より混雑が緩和されており、平日の午後が最も混んでいることが読み取れます。
ウェブサイトethereumprice.org/gasでは、1週間のガス代を色分けして示しています。
ネットワークの通信量が多いけれども、トランザクション実行を先延ばしにできない(またはしたくない)場合、もう少し詳細かつ正確に、トランザクション完了に必要なガス代を見積もることができます。多くのイーサリアム・ウォレットでは、ガス代およびトランザクション完了にかかる時間の見積もりを出していますが、これらの数字は推定に過ぎず、実際のネットワーク状況を考慮していません。
多くのイーサリアム・ウォレットでは、ユーザーは、トランザクション完了のスピードによって異なる推定ガス代の選択が可能です。
そのため、Gas NowやEtherscan’s Gas Trackerといったツールを使用することにより、ユーザーは、ウォレットで見積もられた手数料および時間により生じる過払いを、回避できるかもしれません。このようなサイトでは、イーサリアム・メインネットにおいて保留中のトランザクションを分析し、一定の時間内でトランザクションを完了するのに必要なガス代を表示しています。以下の画像で示されているように、ほぼ即座にトランザクションを完了させようとすると、優先度の低いトランザクションを送信するよりも、はるかにコストがかかってしまう可能性があります。
GasNowを利用することにより、ユーザーはガス代の過払いを防ぐことができます。
急ぎでない場合、ユーザーは追跡用のツールを使用してからウォレットに戻り、望ましい時間帯および手数料を選択することができます。例えば、MetaMaskウォレットでは、上部の画像のように、トランザクション完了速度の異なる3つの選択肢(遅い、平均または速い)が提示されています。この他にも「詳細設定(Advanced Option)」が可能な場合、ユーザーは、例示された選択肢から選ぶのではなく、支払うことができる最大ガス料金を設定することも可能です。
世界中のユーザーが、イーサリアム2.0のアップグレードを心待ちにしている一方、イーサリアム拡張の手助けとなる「レイヤー2」ソリューションが、開発されています。レイヤー2技術には、イーサリアム・ネットワーク上のサイドチェーンへトランザクション移行する技術2や、ロールアップ(Rollup)と呼ばれる一連の技術が含まれています。どちらの技術も、当面の間、ガス代節約およびユーザー体験向上に役立つと考えられています。
また、Loom、 SKALEおよび Polygonといった開発者向けフレームワークもあり、これらは、ユーザーに高速かつ低コストのトランザクションを提供する必要があるdapp用に設計されています。例えば、ブロックチェーンゲームのユーザーは、少額の暗号通貨を手頃な値段で送付する手段が必要なため、ブロックチェーンゲーム開発者は、このようなフレームワークに魅力を感じています。
レイヤー2ソリューションについて学び、人気のプロジェクトについて調べるには、DeFiPrimeおよびEthereum.orgにアクセスしてみてください。
CryptoZombiesコーディング・スクール (CryptoZombies.io)は、レイヤー2ソリューションLoom上に構築されています。
ガス代高騰は、イーサリアムがDeFiアプリケーション構築において、最も人気のあるプラットフォームとして成功した証である一方、このせいで、シンプルなブロックチェーン・トランザクションでさえ、多くの人にとって、経済的ではなくなってしまいます。しかし、dappをより効率的に構築および利用する方法を、開発者たちが追求していくにつれ、ガス代節約方法を発見する機会が、ユーザーへ提供されていきます。
イーサリアム・エコシステムおよびDeFiムーブメントの中で、たくさんのことが起きています。MakerDAOおよびMakerのグローバルなコミュニティについて学び、最新情報を入手しましょう。