マイノリティをDeFiへ:Maker理事長Tonya Evansにインタビュー

March 15, 2021

Maker Foundation理事会長のTonya M. Evansは、ペンシルバニア州立Dickinsonロースクールで教授を務めており、先日終身雇用の地位に就きました。彼女はブロックチェーン、知的財産権、ならびに娯楽および行政に関わる法律分野の授業を担当しています。Dickinsonロースクールで教鞭をとる以前は、ニューハンプシャー大学のFranklin Pierceロースクールにて、教授兼学務副部長として働いていました。彼女は、Dickinsonロースクールでブロックチェーン、暗号通貨および法律に関する専門的なオンライン修了証書プログラムを作成し、指揮しています。これに加え、一連のFrom Cash to Cryptoコースも指導しています。分散型金融および暗号通貨について、定期的にメディアにて論評も出しています。

Makerは先月下旬、Tonyaにインタビューする機会を設け、彼女のDeFiへの熱意、およびDeFiがマイノリティを迎え入れ、全ての人を金融システムに包括する潜在的可能性について話し合いました。

Penn State Dickinson Law School professor Tonya M. Evans is passionate about welcoming minorities into DeFi.
TonyaはMaker Foundation理事会の初期メンバーです。

Maker:インタビューのお時間いただき、ありがとうございます。お忙しいのは承知なので、早速本題に入っていきましょう。DeFiを支えるブロックチェーン技術には、金融サービスを民主化するという暗号通貨の使命を果たす大きなポテンシャルがあるにもかかわらず、米国のDeFi分野では、マイノリティが軽視されたままであることについて、どうお考えですか?

TE:暗号通貨およびDLT(分散型台帳技術)は、金融およびテクノロジーの交差点にあります。この二つの分野では、黒人および褐色人種は、長い間軽視されてきました。テクノロジーが革新的であるからといって、この事実はそう簡単には変わりません。暗号通貨やDeFiに深く関わるには、金融およびテクノロジーについて学ばなければいけません。

ビットコインが発明される以前から、サイファーパンク界隈には、基本的に白人男性しかいませんでした。排他的な意図があったわけではありませんが、人間は既に知っている人と一緒に働きたいと思うものです。DeFiを全ての人が利用できる貯蓄および投資の代替手段にする、というビジョンに従うなら、まずは参加を阻止している組織的な課題を認識し、意図的に全ての人を受け入れ、教育を施していく必要があります。

私たちは今、転換点に位置しています。黒人や褐色人種のコミュニティを含め、暗号通貨に興味を持つ人々が増えている今、暗号通貨を見守りながら、私は非常に勇気づけられています。

Maker:テクノロジー分野では、女性が過小評価されています。このことは特に、黒人女性にどのような影響を与えていますか? 

TE:黒人女性は、他の人よりも差別を経験しています。彼女たちは、黒人であり女性であるため、人種的偏見に悩まされる黒人や、ジェンダーに基づいた偏見の被害者となる白人女性とは、異なる経験をしています。黒人女性は、人種とジェンダーという両方の軸の上に生きています。そのため私たちは、特定の人種が十分に代表されるようサポートする以前に、この交差部分に気づかなければいけません。私たちは、黒人女性がテクノロジー業界で歓迎されるようにするだけでなく、昇進するのに必要な知識および情報を持ち合わせられるように、努力する必要があります。

Maker:過小評価を克服するには教育がいかに重要であるか、以前お話しされていました。ご自身のご経験から、どのような教育的アプローチが現在最も効果的だと思いますか?また反対に、何が足りないと思いますか?

TE:黒人および褐色人種のコミュニティは、金銭的に保守的で、ビジネスおよび政府を信頼しない傾向にあります。後悔よりも安全性を優先しているため、彼らは暗号通貨のような最先端の資産クラスをただ傍観しています。教育的機会へのアクセスを可能にし、難しい専門用語を取り除きながら暗号通貨領域を分かりやすく説明することができた時、大きな影響力が生まれると同時に、人々の疑念が晴れ、知識が増えていくでしょう。そうすればまた、自分で意思決定ができるように、追加のリサーチを行い、詳細な分析ができるようになります。手っ取り早くお金を稼ぐことを求め、リサーチせずに暗号通貨世界に飛び込む、および参加する人が常に存在しているため、このことは非常に重要です。

暗号通貨世界のFOMOは実際に存在しており、業界はまた熱狂しています。私がClubhouseに参加した時、何の資格もなしに、法律および金融に関して助言している自称「専門家」がたくさんいました。残念なことに、この業界、特に黒人および褐色人種コミュニティには、真の思想的リーダーがいません。暗号通貨の普及および教育が促進されるよう、多様性を受け入れなければいけません。暗号通貨ニュースサイトでは、たくさんの情報が共有されていますが、そのようなサイトでは、何度も同じ人が取り上げられている傾向があります。現在はまだ存在していないレベルの信頼を植え付けるために、私やIsaiah Jacksonのような、女性および有色人種の思想的リーダーが必要です。Isaiah Jacksonは、Bitcoin & Black America1の作者で、Community CryptoというCoindesk TVの新番組の司会を務めています。私もその番組に、最近出演しました。

私の教育シリーズ、From Cash to Cryptoでは、ターゲット層に対して、この業界に参入するためにの3つの異なるコースオプション(Explore™、Core™およびEncore™)を提供しています。90分のExplore™コースでは、暗号通貨用語、技術およびツールが紹介され、暗号通貨ウォレット設定方法を学び、暗号通貨を購入および運用できます。このコースには、送金および投資機会を求めている投資家になりたての人など、世界中から様々な人が集まっています。

Core™およびEncore™は、複数のコースおよびモジュールからできています。Core™では、DeFi、ブロックチェーンおよび暗号通貨の基礎を掘り下げ、ウォレットおよび取引所設定をアシストします。法律家および金融サービス業にいる人に人気なEncore™では、CORE™でカバーされたトピックに加え、暗号資産に関わる法律および税金問題を探求しています。

これらのシリーズでは、学生にコミュニティの意味を教え、暗号通貨分野で安全かつ合法に、自信を持って行動できるよう推進しています。このような教育は、代々継承されていく富という観点から見たら、既に家庭を変えつつあります。次の世代は、一から始めなくてもいいのです。

Maker:今後DeFiが真に世界的な力を持つようになるには、暗号通貨分野は、その他どのような課題に取り組んでいくべきですか?

TE:DeFiには世界の金融システムを改革するポテンシャルがあります。しかしほとんどの人は、自分で暗号通貨ウォレットおよび秘密鍵を管理したくはありません。従来の金融システムは非常に馴染みのあるもので、ある程度のセキュリティが提供されていますが、自律、費用効率の高さ、および透明性というDeFiの主要な利点を提供していません。そのため、DeFiとの融合を必要としています。

DeFiへの移行が進み、DeFiに参入する人が増加する中、私たちは全ての人がDeFiを利用できるようにしていかなければなりません。分散型金融には、既存金融と同じ組織的問題を抱えてほしくはありません。信頼は非常に重要です。私たちは、DeFi開発の裏にあるコードへの信頼に注目していますが、ユーザーはこの分野を構築している組織も信頼しなければなりません。そして全ての人が、それに関与する必要があります。

Maker:これを考慮して、Mastercardなどの大手企業が暗号通貨分野に参入していることについて、どうお考えですか?

TE:主要金融機関は、競争力を維持するために暗号通貨業界に参入しているというのが事実にもかかわらず、私は慎重でありながらも楽観視しています。彼らの参入により送金分野に関わる人が増えるのであれば、それは良いことだと思います。しかし、彼らが実際にそのようなことをやってくれるのか、観察していきたいです。私たちには、現状を打破する素晴らしい機会が与えられていますが、Mastercardを含む企業は、多様性の受け入れ、および全ての人にとって公平な機会創造を、意図的に熟考すべきです。彼らが使命を果たしてくれるよう、圧力をかけていく必要があります。

Maker:最後に、どのような経緯からMaker Foundation理事会に参加しましたか?また、MakerDAOのどのような部分に、特に期待していますか?

TE:MakerDAOのストーリーが大好きです!2019年に私は、ニューヨークで開催されたブロックチェーン・ウィークの「Black and Blockchain(黒人とブロックチェーン)」に登壇しました。Maker Foundation人事部代表、Jeremy Hollisterも同じ部屋にいましたが、一緒に話すことはありませんでした。

その時にMakerDAOに夢中になり、ポッドキャスト「Unchained」でLaura Shinがルーンへ行ったインタビューを聞きました。Makerはとても革新的だと思い、イーサリアム仮想マシンが存在している理由が分かりました。その後すぐに、Jeremyが連絡をくれました。思いがけない偶然でした。

Maker Foundationはおそらく、暗号通貨世界の中で、最も多様性に富んだ組織だと思います。今後MakerDAOの完全な分散化へ向けて進んでいく過程においても、このまま多様性を維持すべきです。豊かな経験により質の良い議論が交わされます。そして私たちの議論は、コミュニティのサポート、およびプロトコルの目標に反映されていきます。非常にユニークで刺激的です!

Maker Foundation理事会について

Maker Foundation理事会は、日常的にFoundation幹部陣の戦略的目標達成に関する進捗状況を確認し、Foundationの戦略的および財務的方向性を適切に監督します。理事会はまた、オープンソース・プロジェクトの運営および金融包括プログラムの実施または運営の専門知識を持つアドバイザーや明確なビジョンを持った人を募集し、業務をサポートしてもらう可能性もあります。 

MakerDAOおよびDaiについて

Maker Foundationは、教育的かつ有益なコンテンツをMakerブログおよびソーシャルメディア・チャンネルで公開しています。MakerDAOフォーラムは、草の根コミュニティの資料および活動の主なハブであり、MakerプロトコルおよびMakerガバナンスに関する詳細なディスカッションの出発点です。

March 15, 2021