イーサリアム2.0がガス代高騰問題に対処し、DaiおよびDeFiのスケールを拡大させる方法

November 26, 2020

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分散型金融 (DeFi) への関心が急増したことにより、イーサリアム・ネットワークの処理能力が限界に近づいてきました。現在の設計では、1秒間に15のトランザクションを処理(tps)しかできません1。この数は十分でないため、ユーザーはトランザクションの遅延、または高い手数料のどちらかを受け入れなければいけません。

「ガス代」として知られるイーサリアムのトランザクション手数料は、需要に応じて変動しています。ここ最近、ガス代が高騰しており、dapp利用にコストがかかるという問題が長い間続いています。これは、Daiを発行したい、他のDeFiプロトコルにDaiをロックしたい、または単に他のユーザーにDaiを送付したいユーザーを含む、全てのイーサリアム・ブロックチェーンユーザーに影響を与えています。

しかしその解決策が、実現しようとしています。

イーサリアム2.0(またはEth2)は、渇望されている一連のネットワーク・アップグレードであり、持続的なガス代高騰問題(およびその他の懸念)の最終的な解決策です。これによりイーサリアム・プラットフォームは、何千単位のトランザクションを1秒間に処理できるようになり、世界中で利用できるレベルにまでスケールアップするでしょう。パフォーマンス性能が新たな領域にまでスケールアップすることで、DaiおよびMakerプロトコルも発展できます。

イーサリアムのガス代とは?

イーサリアム・ブロックチェーンとは、グローバルなコンピューティング・ネットワークであり、MakerプロトコルのようなオープンなDeFiアプリケーションが構築されています。イーサリアム・ネットワーク上でトランザクションを行うには、ユーザーは、シンプルなトークン送付から複雑なdapp関連のトランザクションまで、全ての完了した(および完了しなかった2)トランザクションを検証または処理しているマイナーに、ガス代をETHで支払わなければなりません。

ガス代は、マイナーがトランザクションを完了するのに必要なエネルギーを補っているため、マイナーはガス代を設定し、トランザクションを拒否、またはユーザーが支払うETHの量に応じてトランザクションに優先順位をつけることができます。つまり、トランザクションを早急に完了させたいユーザーは、高いガス代を払うことでスピードを確保することができます。

イーサリアムのガス代問題により、トランザクション手数料が持続不可能な程に高騰しました。執筆時点では、単純なDaiの送付には約6ドルかかりますが、Maker Vault開設には75ドル以上が必要です。そのため小規模のDai利用は経済的ではなく、DeFiサービスの広範囲での普及の障壁となっています。

Ethereum gas issues make opening a small Vault expensive.
少額のVault開設は、現在コスト効率が悪いです。

Ethereum 2.0 —主なアップグレード

セレニティとしても知られているEth2は、ネットワークの効率性、スケーラビリティ、持続性、堅牢性および汎用性の向上を目的として設計された一連のアップグレードから構成されています3。Eth2はとりわけ、ガス代問題に対応しているため、Daiおよび他のDeFiサービスを利用したトランザクションのコストが引き下げられます。

新しいProof of Stakeモデル

イーサリアムの開発者は、proof-of-stake(PoS)に移行することで、現在のproof-of-workコンセンサスに必要な多量の電力消費、および専門的なハードウェアへの依存を減らすことを目指しています4。PoSシステムは、ビーコンチェーンと呼ばれるチェーンで導入されます。PoSでは、経済的コミットメントを要求することで多量のエネルギー消費を避けつつ、分散型のイーサリアムネットワークを合意に至らせることができ、ネットワークのセキュリティが維持されます。

最低32ETHを保有している人は誰でも、ETHをステークし、トランザクション処理、新規ブロックのブロックチェーンへの追加、およびデータ保存の役割を担っているバリデータになることができます5。単独でステークをするのに必要な32ETHを持ち合わせていないユーザーは、ステーキングプールに参加できます。PoSでは、ユーザーがネットワークのセキュリティに深く関与しているため、分散化が促進されます。

シャードチェーン

もう一つの計画されたアップグレードであるシャーディングにより、ネットワークは現在よりも多くのトランザクションを処理できるようになり、次のブロックのスペースを巡る競争が軽減するため、その過程のトランザクション手数料が引き下げられます。

現在のイーサリアムの形態では、ネットワーク内の全てのノードが、それまでに行われた全てのトランザクションを検証、ダウンロードおよび保存してから、新規トランザクションを処理しなければなりません。そのため、イーサリアムのtpsは15が限界であるというボトルネックがあります。Eth2では、多数の準独立型ブロックチェーンであるシャードでトランザクションが共有され、重負荷が分散されます。PoSのバリデータ(ステーカー)は、ネットワーク全体ではなく、検証しているシャードのトランザクションのみ保存および処理する必要があります。 


出典:Ethos.dev

ビーコンチェーンとは、Eth2で初めてローンチされる要素であり、2020年12月1日に稼働開始予定です6。ネットワークがオーケストラだとすると、ビーコンチェーンは指揮者として機能し、バリデータやデータを報告するネットワークのシャードの連携をとる役割を果たします。ビーコンチェーンは、各トランザクションそのものの処理は行いませんが、ネットワーク全体で共有されている全てのデータの最終的権限として機能します。

中間的スケーリング・ソリューション:フェーズ1.5

Eth2の完全な展開には、数年かかると言われています。その間、既存のテクノロジーであるロールアップが、中期的なイーサリアム拡大、およびガス代削減に役立つでしょう。ロールアップとは、オフチェーンでトランザクションをまとめ、そのまとめたトランザクションをメインチェーンに送ることを指します7。これによりイーサリアムは、短中期的視点では、200倍のトランザクションをサポートできるようになります。フェーズ1.5として知られているこの中間的ソリューションにより、開発者はEth2を待たずに、本格的に自身のdappでDaiおよびMakerプロトコルを使用できます。

DaiおよびDeFiにとってイーサリアム2.0が意味すること

Eth2は、いわゆる「スケーラビリティのトリレンマ」を解決し、分散化、セキュリティ、およびスケーラビリティを損なわずに、ネットワーク・アーキテクチャを最適化するために設計されました。うまくいけば、このアップグレードによりイーサリアムは、セキュリティおよび分散型の両方を維持したまま、現在の処理能力の何千倍にもスケールアップできると言われています8。これは、イーサリアム・ネットワーク上に構築されているDaiおよびDeFiにとって、素晴らしいことです。

シャーディングだけでも、Daiの発行および送付に、数ドルではなく常に数セントしかかからなかった日々に戻ることができるでしょう。低コストなトランザクションにより、Daiの普及、および世界中でのDaiの利用方法が円滑化されます。このことは、ゲーマーはゲーム内通貨としてDaiを利用しているビデオゲームを介したトランザクションを躊躇する必要がなく、商品およびサービスの支払いでDaiに対応するオンライン店舗が増え、世界中の人々が再度少額の貯蓄にDaiを利用し、DeFiサービスにアクセスできるということを意味しています。

DaiおよびMakerプロトコルを使用した構築については、Maker開発者ライブラリをご覧ください。プロトコル上に構築された他のプロジェクトについては、Makerエコシステムページをご覧ください。

November 26, 2020