新しいブロックチェーンアプリはどのようにDeFiを使いやすくしているのか
July 2, 2021
分散型金融(DeFi)とは、急成長しているブロックチェーン基盤のムーブメントであり、従来の金融システムよりも優れた透明性、セキュリティ、改竄不可能性、および効率性を提供しています。DeFiは、急速に従来の金融サービスを拡張しており、フィンテック組織は、既存のアプリおよびサービスに、ブロックチェーン技術を統合し始めています。しかし、ユーザーがDeFiの新しいテクノロジーを探究するにあたり、学習曲線が存在しています。
急速にイノベーションが行われるということは、DeFiテクノロジーの進歩が、しばしばユーザー体験向上のペースを上回っていることを意味しています。これでは、学習のハードルが上がるばかりです。それだけでなく、従来の中央集権型金融(CeFi)アプリケーションに関する知識に引っ張られた思い込みは、役に立たないことがあります。例えばDeFiでは、ユーザーの資金は、銀行ではなく、暗号通貨ウォレットで保有されます。ユーザーが「自己主権」を有しているため、自身の資産に対する唯一の管理権を持つのも、全てのトランザクションおよび資金保護の責任を負うのもユーザーです。DeFiには、ユーザーをサポートする実店舗や管理者、その他集権的な仲介者も存在しません。その結果、苦く、時に金銭的に痛手な失敗をおかしてしまう可能性があります。
後述のよくある失敗の中には、暗号通貨およびDeFiに精通した人も含めた、全ての人に共通した失敗もあります。最後の数個は、DaiおよびMakerプロトコルに特有なものです。
分散型金融システムは、従来のフィンテック・アプリケーションとは大幅に異なっています。DeFiシステムは、ほぼ全ての側面において、異質と思われるような方法で運営されているため、経験豊富なユーザーでも簡単に間違いをおかしてしまいます。
主な相違点には、以下のようなものがあります。
DeFiに飛び込んでみることは魅力的ですが、DeFi分野の進歩は速く、技術的アップデートが頻繁にリリースされます。DeFiに飛びつく前に、Metamaskのような暗号通貨ウォレットを含む人気アプリケーションや、異なる種類の取引所について、時間をかけてよく学習してみることには、十分な価値があるでしょう。また、定期的に自身の知識を一新することも、同様に重要です。
Oasis.appやUniswapのような分散型取引所(DEX)では、ピア・ツー・ピアの暗号通貨トランザクションが可能な一方、CoinbaseやBinanceのような中央集権的取引所(CEX)は、ユーザーが保有する資産の管理権を持つ第三機関が管理しています。DEXおよびCEXのどちらででも、ユーザーは暗号通貨トークンをトレードできますが、その方法が異なっているため、ユーザーは混乱してしまう可能性があります。
DEXの利点の一つは、ユーザー自身の暗号通貨ウォレットから直接トークンをトレードできる点です。これによりCEXで資産をトレードおよび保有するよりも、高度なセキュリティを保つことが可能です。CEXに保有されている資産の方が、ハッキングおよび盗難の被害を受けやすいです。
Oasis DEXでトレード可能なトークンの一例
DEXおよびCEXのもう一つの重要な違いとして、多くのDEXでは、オーダーブックを利用して売買オーダーをマッチングさせるのではなく、需要に応じてアルゴリズム的に計算された価格を提供しています1。これによりユーザー体験が簡単かつ便利になります。
ブロックチェーンのトランザクションは、不可逆的な設計になっています。間違いが起きた、または詐欺の被害にあった場合、銀行では資金を顧客のアカウントに戻すことができますが、全ての暗号通貨トランザクションは、永久的です。つまりユーザーは、トークンをアドレスに送付する際、およびトークンを受け取るために他人にアドレスを教える際は、十分気をつけなければいけません。
しかし、一つの予防策がユーザーへ提供されています。暗号通貨アドレスには、チェックサム2と呼ばれているエラーチェック機能が組み込まれており、これによりアドレスのタイプミス(間違えて一文字抜かしてしまうなど)を防ぐことができます。イーサリアム・アドレスには、チェックサムバージョン、および非チェックサムバージョンの両方があります。チェックサム・バージョンのイーサリアム・アドレスには、大文字が含まれていますが、非チェックサム・バージョンには小文字しか含まれていません。常にチェックサム・バージョンを利用することをおすすめします。実際、チェックサム・バージョンにのみ対応しているウォレットもあります。
タイプミスに対しては保護策が講じられていますが、他にもユーザーがおかす可能性のある、アドレス関連の失敗があります。
全てのビットコイン・アドレスは、ビットコインキャッシュ・ブロックチェーンにも存在しています。(上図の検索は、Blockchain.comで行われています。)
これらのケース全てに対する解決策は、トークンを送りたいアドレスおよびブロックチェーンの両方をダブルチェックすることです。
DeFiアプリ(dapp)およびサービスでは、ユーザーは、秘密鍵を保持しなければいけません。秘密鍵とは、暗号通貨「アドレス」、およびそのアドレスにある資金へのアクセス権を提供している、長い独自の文字列です。秘密鍵は、従来の金融システムで利用されている、ユーザーネームまたはeメール、およびパスワードを利用してアカウントにアクセスするモデルに取って代わるものです。多くの場合、秘密鍵はランダムに発行された12〜24個の「シードフレーズ」から作られています3。秘密鍵は、アドレスから資金にアクセスするのに唯一必要なものであり、誤って秘密鍵を失くした場合にユーザーを助けてくれる、信頼できる管理者も存在していないため、秘密鍵およびシードフレーズのセキュリティを保護しておくことは、非常に重要です。
クラウドまたはローカルデバイスに、シードフレーズのコピーを暗号化されていないまま保持するのではなく、オフラインで持っておきましょう。秘密鍵は、Ledger4またはTrezorのような専用のハードウェア・デバイス、モバイルウォレット、MetaMaskのようなブラウザ拡張機能、およびその他多くのイーサリアム・ウォレット用の選択肢と共に利用することにより保管可能です。それぞれのソリューションには一長一短があり、セキュリティを保証するには、正しく利用する必要があります。どのソリューションが自身のニーズに合っているかを判断するのは、あなた自身です。
また、コンピュータの健全性維持も、資産のセキュリティには不可欠です。信頼できる発信元から、マルウェアおよびアンチウイルス用のソフトウェアをダウンロードし、頻繁に点検しましょう。怪しいeメールやリンクには注意しましょう。
ブロックチェーン・ユーザーは、トランザクションの処理および記録に時間およびエネルギーを費やしているマイナーに、手数料を払わなければいけません。イーサリアム・ネットワークの手数料は、ガス代として知られています。ガス代は、オペレーションの複雑さ、およびある時点でブロックチェーンに提出されたトランザクション数など、いくつかの要因によって変更されます。
トランザクションを完了させる前に、ユーザーは、ガス代の支払いを追加します。支払額が少なすぎる場合、トランザクション完了までに何時間もかかる可能性、またはトランザクションが拒否される可能性すらあります。ほとんどのイーサリアム・ウォレットでは、ユーザーのためにガス代を予測してくれますが、ブロックチェーン上の活動量が多いことにより、提示された額よりも実際のガス代が多いこともあります。長時間に及ぶトランザクションの遅延および拒否を避けるために、トランザクションを開始する前に、現在のガス代レートをEth Gas Stationで確認しましょう。Etherscan.ioなどのブロック・エクスプローラーにアドレスを入力することにより、トランザクションの進み具合を見ることもできます。
詐欺師はあなたを欺こうとしています。彼らは偽のインターフェースを作り、ソーシャルメディアおよびメッセージ・プラットフォームで秘密鍵を聞き出し、様々な方法を使って資金を盗もうとします。DeFiアプリ、ブラウザ拡張機能、アプリストアからダウンロードしたソフトウェア、またはウェブサイト・インターフェースを使う時はいつでも、本物のバージョンのみを利用するよう、気をつけましょう5。
Saiは、1番最初の単数担保型Daiトークンです。2019年11月の複数担保型Dai(MCD)のローンチに伴い、Saiはシャットダウンされました。その際にユーザーは、SaiをDaiに移行するように指示され、多くのユーザーがこれに従いました。移行のオプションはもう利用できませんが、Saiを返済して、担保にしているETHを受け取ることは可能です。SaiおよびMCDは、両方ともDaiと呼ばれており、用語の更新が追いついていないプラットフォームもあるため、ウォレットにSaiがあったとしても、MCDだと思ってしまうかもしれません。このように、ユーザーは混乱してしまいます。まだSaiを保有していたとしても、Uniswapなど、SaiをMCDまたは他のトークンにトレード可能な取引所のいくつかでは、流動性に限りがあるかもしれません。
新しいDaiのロゴは、MCDリリースの直前に発表されました。
メディア、Makerプロトコル・ユーザー、およびMakerコミュニティ・メンバーでさえ、Makerプロトコル、Maker FoundationおよびMakerDAOを混同してしまうことがあります。これら3つはしばしばまとめて「Maker」と称されるため、混乱が生じてしまいます。簡単にこれらの用語を確認し、それぞれ何を指しているか見てみましょう。
まずはMakerプロトコルです。Makerプロトコルとは、ブロックチェーン基盤のスマートコントラクト、および分散型価格フィード(オラクル)から成るシステムであり、価値保存手段であるDaiの発行を可能にしています。
次にMakerDAOです。Dai価格の安定性およびMakerプロトコルのセキュリティは、グローバルなMKR有権者コミュニティが管理しています。MKR有権者は、Makerプロトコルのブロックチェーン投票システムを利用して、Vaultに課された安定化手数料、債務上限、および新規担保タイプ追加等、重要なパラメータを設定しています。MakerプロトコルおよびMakerコミュニティが共に、MakerDAOと呼ばれている自律分散型組織を構成しています。
最後に、Maker Foundationです。Maker Foundationは、MakerDAOの立ち上げおよび構築に貢献しています。Maker Foundationは、この立ち上げプロセス完了と共に、DAOが自律し完全に分散化できるよう、DAOへの最後のサポートを提供しながら、長年の約束されていた解散に向けて、徐々に進んでいます。
MakerDAOには、大きなグローバル・コミュニティがあり、MakerDAOフォーラムの議論から始まる、完全にオープンな分散型ガバナンス・プロセスを有しています。誰でも意見を言い、Makerプロトコル改善方法、またはDaiの安定性維持のためのパラメータ変更を、提案することができます。MakerDAOのガバナンストークンであるMKRの保有者は、特定の提案(新規担保タイプ追加など)に関して、議論を進める意向がコミュニティにあるかどうかを示しているガバナンス調査、および提案を実行しプロトコルに変更を加えるエグゼクティブ投票にて、票を投じることが可能です。
DeFiでは、草の根ユーザーに、分散型金融サービスへのアクセス機会以上のことを提供しています。DeFiの主導権が分散型かつコミュニティ基盤であるという性質により、dapp作成から、ガバナンス参加およびプラットフォーム運営方法決定に至るまで、誰でもDeFiに関与することができます。
vote.makerdao.comのMakerDAO投票ポータルでは、現在および過去のエグゼクティブ投票およびガバナンス調査投票が確認できます。
DaiおよびMakerプロトコルでは、DeFi世界と関わる新しい方法が提供されています。実験的なテクノロジーの利用には常にリスクが伴いますが、リサーチおよびデュー・デリジェンスを行うことにより、失敗を回避できます。
DaiおよびMakerプロトコルのさらなる詳細、ならびにユースケースについては、MakerブログおよびMakerDAOコミュニティ開発ポータルをご覧ください。
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