イーサリアム・アドレスを分かりやすい名前に置き換えるべき理由とその方法

June 25, 2021

イーサリアムでトランザクションを実行する際、一般的にユーザーは、暗号学に基づいて発行されたアドレスを利用しています。このようなアドレスは、長ったらしい一連の英数字で構成されているため、読み取りが難しく、記憶することはほぼ不可能です。この問題を解決してくれるのが、オープンソースかつコミュニティ所有の、非営利ブロックチェーン・ネームサービスであるEthereum Naming Service(ENS)です。ENSは、ユーザーの暗号通貨に対する懸念解消にも役立ちます。

ウェブユーザーが、ドメイン・ネーム・サービス(DNS; Domain Name Service)を利用し、読みやすいドメインネームを登録することにより、数字でできたIP(Internet Protocol)アドレスを置換しているのと同様に、ブロックチェーン・ユーザーも、冗長なイーサリアム・アドレスを、ENSに登録した短く覚えやすいネームに変更できます。もうアドレスをコピー&ペーストしなくてもよくなるのだと、想像してみてください。 

ENSでのネーム登録は簡単で、ENSでは、分散型金融アプリケーション(dapp)やその他のユーザーと関わる際に、利便性およびより優れたセキュリティを享受できるという利点を、あらゆる人へ提供しています。

Ethereum Name Serviceの仕組み

イーサリアム上にあるアドレスは全て、ブロックチェーン・アカウントの識別子として機能しており、各アドレスではネーム付けおよびその登録が可能です。全てのネームは唯一無二で、登録者のみがそのネームを所有できるため、各ネームは非代替性トークン(NFT; Non-Fungible Token)の形で表されています。NFTとは、主にデジタルアートやコレクティブル世界で知られているデジタル資産です。NFTとして登録されたネームにより真正性が証明されるだけでなく、NFT所有者に対しては、収益化という利点も提供されています(下記参照)。


ENSを介することにより、ユーザーは暗号通貨アドレスを、より読み取りやすいネームに変更可能です。

イーサリアム・メインネット上におけるENSレコードの拡張子は、元来「.eth」(例:ethereum.eth)となっています。テストネット上の開発者は、.testの拡張子も利用可能です。ENSは、DNSで所有されているネームでも利用可能です。 

ネームの所有者は、サブドメインの作成ができます。これにより複数のユーザー(例:john.defiservices.eth、jane.defiservices.eth)や、複数のユースケース(例:accounting.defiservices.eth、support.defiservices.eth)を、各ドメインで作成可能です。ネーム所有者はまた、所有権を保持したまま、他のユーザーへレコードの管理権を譲渡できます1。さらに特定のURL、ソーシャルメディアのプロフィール、アバターおよびキーワードなどを識別する、公的にアクセス可能な「テキスト・レコード」の作成もできます。このような機能によりユーザーは、誰でも検索可能かつ、Web3サービスのアクセスをサポートしているコンタクト情報を、安全に保存できるようになります。これだけでなく、ネームの所有者が登録したネーム保持しながらリンク先のアドレスを変更したい場合、それも可能です。


ENS運営代表Brantly Millegan氏のテキスト・レコード

このようなことからThe Ethereum Naming Serviceは、単にイーサリアムのためのサービスではなく、イーサリアム上に構築されている幅広いWeb3サービスと言えるでしょう。

ENSでネームを登録する方法とその理由

ENSでのネーム予約および登録は、誰でも数分でできます。執筆時点では、約5文字の.ethネームの1年間の費用はETHで5ドルです。これに加え、イーサリアムのガス代も必要になります。より希少性の高い3文字または4文字のネームの場合は、さらに高価になります。登録者から収集した手数料は、コミュニティが管理しているマルチシグ・アカウントに保管されており、ENSエコシステム内におけるプロジェクト開発のために、今後利用される可能性があります2

以下の動画では、ENSのBrantly Millegan氏が、ネーム登録プロセスを順を追って説明しています。

ネームが登録されると、そのネームは、Coinbase、MetaMaskおよびUniswapなど、ENS規格が統合されているウォレット、dappまたはブラウザなどで利用可能です。

ENSは、以下のような多数の利点を提供しています。

  • 分かりやすいネームの表示:ENSの設定にて「逆引き(reverse resolution、reverse lookup)」を有効にすると、Uniswapを含むdappやDeFiSaverスマートウォレットを含むウォレット・アプリでは、イーサリアム・アドレスではなく、登録ネームが表示されます。
  • コストの高い間違いを減らす:暗号学的なアドレスではなくネームを使用することにより、暗号通貨を間違ったアドレスに送付するというよくある失敗を起こす可能性を、低減することができます。
  • 容易なアカウント検索および確認:ENSに登録されたネームをEtherscanで検索することにより、そのイーサリアム・アカウントで保有されているトークンの数や価値を見ることができます。
  • ネームの売却およびステーク:ENSに登録されているネームは非代替性トークンであるため、OpenSeaRaribleといったNFT市場で売買可能です。さらには、これらを担保としてサポートしているDeFiプラットフォームもあります。


ENSドメインはOpenSeaのようなNFT市場で売買可能です。

Web3の公共インフラ

冗長で覚えづらいイーサリアム・アドレスを覚えやすいネームに置き換えることにより、トランザクション体験が簡易化され、ブロックチェーン技術へのアクセスがより楽しいものになります。ENSや同様の取り組みを統合するDeFiサービスが増えるにつれ、Web3はよりユーザーに親しみやすいものへと変容してきています。

DeFi世界を探索してみるには、まずはwww.MakerDAO.com/ecosystemを覗いてみましょう。

June 25, 2021