投票知識をつける:MakerDAOの4つの担保・清算リソース
June 18, 2021
4月30日、Makerプロトコル清算システムの最新アップグレードであるLiquidations 2.0に、ETHおよびWBTC担保タイプを統合することを提案したエグゼクティブ投票が、投票ポータルに掲載されました。多くのコミュニティ議論が交わされ、コミュニティから多数のサポートを受けた後、3月にMakerガバナンスにより承認された、この全面的なシステム修繕の結果、Makerプロトコルはより効率的に規模を拡大できるようになり、MakerDAOは次の段階へと進むことが可能になります。
重要なことに、Maker FoundationがMakerコミュニティと共に、DAO築き上げの主要作業を行うのは、このアップグレードで最後になり、DAOは分散化に向けその道を進んでいくことになります。清算システムのアップグレードに加え、DAO運営に必要なタスクおよび予算の管理体制である中核ユニットのフレームワークをガバナンスで承認することにより、迅速な分散化に向けた礎が築かれるだけでなく、長期にわたって計画されていたFoundation解散への準備も整ってきています。
LINKおよびYFI統合の承認に続き、Makerプロトコルが承認した中で、最も利用されている担保タイプであるETHおよびWBTC統合の提案も承認されました。投票者がETHおよびWBTCを承認したことにより、全てのDaiの約70%が、新しい清算システムの対象となりました。この数字には、ステーブルコイン以外の資産を担保に発行されたDaiの大部分が含まれています。
この投票から数週間後に、残りの標準担保タイプを新しい清算システムに統合するかどうかをガバナンスに問う、もう一つの提案がMaker投票ポータルに掲載されました。また、プロトコルで担保として承認されているLPトークンの統合に関する提案も、投票ポータルに掲載される予定です。
全てのMaker VaultをLiquidation 2.0に統合することにより、プロトコルが担保不足になるリスクが軽減され、システムの効率性に関して、ユーザーの信頼が向上すると期待されています。
清算システムのオークションによりコミュニティは、ユーザーがMaker Vaultで発行したDai全てに必要な担保水準を維持することが可能になるため、このシステムは、Makerプロトコルにとって不可欠な要素となっています。要するに、清算システムで常にMakerプロトコルを過剰担保状態にしておくことにより、Daiは、米ドルとのソフトペッグを維持しています。
Liquidations 2.0は、シンプルでありながらバージョン1.2よりも効率的かつ安全な設計であるため、キーパーなどがオークションに参加する機会が、増加すると考えられます。
流通しているDaiは全て、Makerプロトコルで担保として承認され、Maker Vaultにロックされている複数のデジタル資産のうちのどれか一つに裏付けられています。各担保資産にはそれぞれ清算率(LR; Liquidation Ratio)があり、その資産に裏付けられているDaiが、過剰担保であることを保証しています。例えば、ETH-A(※)のLRは150%です。つまり、ETH-AのVaultから100Daiが発行される場合、その100Daiは、少なくとも150ドル相当のETHに担保されていなければなりません。
Vault所有者は、担保資産のLRを維持できている限り、その資産を担保にDaiを発行し続けることができます。しかし、LRが必要とされている基準値を下回った場合、オークションが発動され、Vaultの中身はDaiで売却されます。
オークションの売り上げは売り上げは、そのVaultで発行されたDaiの埋め合わせ、Vaultに課される安定化手数料支払い、およびMakerガバナンスが設定した清算ペナルティ(現在は13%)支払いに利用されます。Daiが残った場合、そのDaiはVault所有者へ返却されます。
プロトコルが承認した担保タイプを網羅したリストは、Oasis.appおよびDaistats.comで確認できます。
Oasis.appでは、Makerプロトコルで承認された各資産タイプの重要情報を表示しています。
新規清算システムへの道のりは、1年以上前に開始し、開発者による研究、デザインの検討、およびコミュニティの関与も経ながら、担保オークションの信頼および効率性を改善する選択肢を模索してきました。Makerフォーラムで全ての人に対して公開された、システムの再設計に関するMIP提出前の議論では、一時的なアップデート(20年9月にリリースされたLiquidation 1.2)に続いて、システムの全面的修正案であるLiquidations 2.0をリリースするという、明確で実行可能な策が提示されました。
Quantstamp、Trail of Bitsおよび ChainSecurityにより監査されているこの新規清算システムにより、機能面では、より高度なセキュリティおよび予測可能性が提供されるだけでなく、MakerコミュニティおよびDeFi分野全体にいる多数のユーザーの参加が容易になるため、分散化が促進されます。監査の最終レポートはこちらからダウンロードできます。監査に加え、Gauntletも比較のために、Liquidations 2.0およびLiquidations 1.2の経済的シミュレーションを実施しました。こちらからレポートをご覧ください。
技術的には、清算プロセスをより速く、より効率的に、より頑丈に、より信頼性の高いものにすることを目的として、Liquidation 2.0では、一連の質的変更が加えられました。主要な変更点には以下が含まれています。
この例では、最後のオラクル価格より20%高い価格で最初のオークション価格が設定されており、入札者が登場するまで価格が下がり続けます。
清算システムの再設計により、担保オークションの参加機会が拡大するだけでなく、オークションの開始から終了までの時間が短縮され、低価格でオークションが終了してしまう可能性が削減されます。その結果、オークションの参加がより分散的になり、清算システムの信頼性および効率性が向上することにより、Makerプロトコルの効率的な規模拡大が可能になるだけでなく、DeFi領域で見られる急速な発展のサポートも可能になります。
Maker清算システムの詳細については、MIP45をご覧ください。
(※)プロトコルで承認された担保資産の中には、複数のバリエーションを持つものもあり、A、B、Cのようにアルファベットで差別化されています。各バリエーションにおいては、その担保に対して設定されたリスクパラメータが異なっています。例えばユーザーは、ETH-A、ETH-BおよびETH-Cを担保にDaiを発行できますが、それぞれ清算率および安定化手数料が異なっています。