MakerプロトコルシステムアップグレードLiquidations 1.2稼働開始

2020年9月15日

Makerプロトコルの清算システムは、Maker Vaultで発行されたDaiの担保が十分であることを保証するために設計された、重要要素です。端的に言えば、Daiの米ドルとのソフトペッグ維持の中核です。

3月12日の市場崩壊の余波を受け、コミュニティはシステムをアップグレードする必要性を認識しました。その結果、Makerガバナンスは、リスクパラメータ調整を含む多くの変更を投票で可決しました。そのうちの一つでは、担保オークション期間を6時間に延ばしました。これは、ネットワークがひどく混雑している際に、キーパーが入札を提出できる時間を増やすために行われました。

このような改善の後、必要な際にプロトコルが大量のVault清算に対応できるように、より頑丈なシステムの設計および実装のためのさらなる変更点について、議論が行われました。システムの完全なアップグレードは、段階的にリリースされていきます。

第一段階であるLiquidation 1.1が、先月の投票の後稼働を開始し、微調整が行われました。Makerプロトコルの最新アップデートであるLiquidation 1.2は、Makerガバナンスによって承認され、8月31日に実行されました。Liquidation 1.2には、任意の時間に行えるオークションの数のスロットル調整など、さらなる改良点が含まれています。最も重要な最終アップグレード、Liquidation 2.0は、おそらく今年後半にコミュニティに提示され、投票が行われるでしょう。

以下ではシステムの背景、変更の理由、および今後予期すべきことを取り上げます。

清算がDaiのペッグを維持している方法

Daiは、ユーザーがMakerプロトコルのMaker Vaultに暗号通貨担保資産を預け入れることで、発行されます。市場の需給がDai価格を決定し、分散型ガバナンス・コミュニティが、投票でDaiの需給に影響を与えるインセンティブを変更することで、価格を安定させています。発行されたDaiの価値をカバーするのに十分な担保が常にプロトコル内にあるようにするために、各担保資産には、Makerガバナンスが決定した清算率(Liquidation Ratio; LR)が付与されています。例えば、ETHのLRは150%です。つまり100Daiの債務を抱えているVaultには、少なくともそのDaiを裏付ける150Daiの価値を持つETHがなければなりません。担保の価値がLRを下回った場合、Vaultの中身はオークションにかけられ、プロトコルのDaiを回収します。

キーパーとは、このような担保オークションに参加して入札を行う、独立したアクター(通常は自動化されたボット)です。落札者が担保を受け取る一方、13%の清算ペナルティが債務に追加され、Vault所有者に課されます。残っている資産は全て、Vault所有者に返却されます。オークション後にVaultに資産が全く残っていない場合、最初に担保に対して発行したDaiのみ、Vault所有者に残されます。

効率的かつ効果的な清算メカニズムは、Daiの価格維持にとってだけでなく、Vault所有者およびDaiユーザー両方のDaiへの信頼維持にとっても不可欠です。担保オークションは、時間がかかればかかるほど、担保資産価格がさらに下落しプロトコルがさらなる債務を負うリスクが高くなるので、迅速に行われなければいけません。さらに担保オークションは、流動性の高い市場環境で行われなければなりません。つまり、オークションにかけられている担保を受け入れ、それによってプロトコルの全てのDaiを回収し、Vault所有者に最良価格を提供するのに十分な入札者が存在していなければなりません。

The Maker Protocol Liquidations System helps ensure that Dai generated in Maker Vaults remains adequately collateralized.
Oasis.appでは、Makerプロトコルで利用可能な全ての担保資産の重要情報がユーザーに提供されています。

Liquidations 1.2:応急処置の改善

価格のボラティリティが激しく、担保価値が短期間で大幅に下落した場合、清算が引き起こすオークションで購入される必要のある資産額を、キーパーがサポートするのが困難になります。現在、キーパーの数が少ないだけでなく、キーパーが自由に使える資金に限りがあります。

Liquidation 1.2は、同時に行えるオークションの数、および常時オークションにかけられる担保の総価値の両方を制限することで、この課題に対応しています。この解決策により、キーパーは取引所を通じて資本を再利用する機会を持ち、複数のオークションに入札できるようになります。それに加え、Liquidation 1.2では、担保の一部だけが売却されるので、瞬間的暴落の際にはVault所有者は幾分か保護されます。概してLiquidation 1.2は、以下のことを目標にしています。

  1. 清算システムへの信頼の保証
    •  清算の数を減少させる戦略の有効化
  2. システムの効率性向上
    • オークションで利用できる流動性の最大化
    • 最良価格での担保清算、Vault所有者への最善結果の提供、プロトコルのDai全ての回収、およびキーパーのさらなるダウンサイド・リスクの最小化
    • Dai価格の安定性をリスクに曝す、大規模清算の影響の削減
    • 清算に影響を与えるオラクル攻撃の防御
    • 予期せぬ状況下(例:ブラックスワン)でプロトコルを保護するメカニズムの提供
  3. 清算エコシステム全体の改良
    • 質(安定性、信頼性、利用可能性および安全性)を向上させ、キーパーソフトウェアが極限の状況でも必要に応じて機能し続けることを保証するための、キーパーソフトウェアのアップデート

Liquidation 1.2に関するこれらおよびその他の技術的詳細は、Makerフォーラムのコミュニティ・ディスカッションでご覧になれます

Liquidations 2.0

現在、清算システムのアップグレードの次段階であるLiquidation 2.0は、仕上げに入っています。Liquidation 2.0では、効率性および信頼性向上、ダッチ・オークション・メカニズムを含むオークション参加プロセスの簡略化、および既存の人気の分散型取引所(DEX)やその他のインタフェースを介したオークションへのアクセスを可能にすることに焦点が当てられています。是非、フォーラムの清算システム再デザイン:MIP事前ディスカッションのトピックをフォローしてみてください。新しい機能についての知識の壁をなくすためのアシストをするMaker Foundationは、コミュニティからのレビューが進むにつれて、Liquidation2.0のレビューについてのブログ記事を公開していきます。

Daiの安定性保護へ、増していく関与

Makerプロトコルの清算システムの再デザインによって、上記のメカニズムを介した担保オークションへのコミュニティからの参加が増え、それによって市場低迷期であってもDaiのドルへのペッグが維持されると同時に、Makerエコシステムのこの重要要素の分散化も進んでいきます。Liquidation 2.0が進展している間、Liquidation 1.2がもたらすアップデートによってオークションは改善されるでしょう。

さらなる情報については、Githubのオークションおよびキーパードキュメンテーションを参照し、Makerフォーラムのコミュニティ・ディスカッションに参加、またはrocket.chatの#keeper channelで担保オークションおよびキーパーについて質問してみてください。

2020年9月15日