2021年に注目すべきDeFiの5つの進歩

February 15, 2021

昨年6月、Makeブログにて、分散型金融(DeFi)分野の新興トレンドについて取り上げました。新しく刺激的なムーブメントであったDeFiは、当時まだ初期段階にあり、総ロック額(TVL; Total Value Locked)が10億ドルのマイルストーンに達したばかりでした。TVLとは、ユーザーが分散型アプリケーション(dapp)に預け入れた暗号通貨額を指しています。このTVLは、6月終わりに20億ドルに到達し、2020年末には150億ドルにまで増加しています1。勢いの衰える素振りが微塵も感じられない今日、いくつかの主要トレンドが既に定着している一方、DeFi分野が2021年で発展していく中で、一見の価値があるトレンドも存在しています。それらはどのようなトレンドなのか、そしてなぜそれが重要なのかを探ってみましょう。

拡大するDeFi:2021年のDeFiムーブメントを形成する発展

1. 優先すべきスケーリング・ソリューション

DeFiの普及は、イーサリアム・ネットワークの負担となり、ガス代と呼ばれているトランザクション手数料が高騰しています。執筆時点では、シンプルなトークン転送ならば数ドルで行えますが、Vault開設など複雑なスマートコントラクトの実行には、数百ドル、もしくはそれ以上のコストがかかってしまいます。イーサリアム2.0により、この慢性的なガス代高騰問題、およびその他課題が最終的には解決され、大衆への普及をサポートできるレベルにまで、ネットワークが拡大されるでしょう。しかし、イーサリアムのアップグレードは、段階を追って実施されており(最初の段階であるPhase 0が20年12月1日にローンチ)、完成するまでに数年かかると言われています。

これを待つ間、開発者たちは、イーサリアム2.0のリリースが完了を待たずとも、スケール(拡張)可能なdappの構築ができるよう、一時的かつ補完的なソリューションを作り出しています。

このような取り組みの一つとして、特定のトークンおよびその運営が、イーサリアム・ネットワークのチャイルドチェーンへ移行されています。この例の一つが、「Matic Network」2です。Matic Networkとは、Polygonが提供している、広範囲にわたるスケーリング・ソリューションの一環です。Maticのトランザクションは、サイドチェーン上で実行されるため、高速かつ低コストで利用可能です。

また別の技術を活用することにより、トランザクションをチェーン外で一つにまとめ、まとまった形のまま、メインのイーサリアム・ブロックチェーンへ提出することも可能です3。このような「まとめ」は、ロールアップ(Maticと同様にPolygonが提供)と呼ばれています。これによりイーサリアムは、現在の200倍のトランザクションをサポートできるようになると考えられています。  

2. AMM基盤DEXの普及

Automated Market Maker(AMM/自動化されたマーケットメーカー)では、流動性プール、および従来のオーダーブックに代わる、需給に応じたアルゴリズムによる価格設定方法が採用されています。これにより、全く新しい分散型取引所(DEX)モデルが、提供されています4。ユーザーは実質上、他のユーザーではなく、スマートコントラクト基盤の流動性プールとトレードを行います。信用を必要としない暗号通貨のトレードにおいて、この方法は使い勝手がよく洗練されたソリューションであり、これにより、慣習的な取引所システムをブロックチェーンに持ち込む際の、課題や複雑性を回避することが可能です。

AMMでは、DeFiプラットフォーム開発者がDeFi領域に特有な需要に対応している方法、および従来の金融分野では見られなかったような機会の提供方法が、例示されています。AMM的アプローチを普及させたUniswapや、Curve、SushiswapおよびBalancerなどは、暗号通貨界隈でよく利用されているDEXです。実際、これら4つのの取引所だけで、TVLが130億ドルにまで上ります5。オーダーブック系では最大のDEXでさえ、最も人気なAMMのトレード量から見たら、ごく僅かな量しかトレードされていません。

UniswapのようなAMMは簡単に利用可能で、高速かつトラストレスな暗号資産のトレードができます。

3. ステーブルコイン:DeFiで魅力的な資産?

イーサリアムの共同創設者、ヴィタリック・ブテリン氏が「DeFiで最も有益であると同時に、最もつまらないモノ」と表現したように6、ステーブルコインにより、暗号通貨分野で悪名高いボラティリティに曝されていない価値保存および移転手段が、ユーザーへ提供されています。またステーブルコインは、資本をDeFiイールドファーミングの機会へ効率的に割り当てる際の、強力なツールであるという点も重要です。

4. NFTs:最も刺激的な暗号通貨トレンド

非代替性トークン(NFT; Non-fungible token)とは、現実世界またはデジタル世界で唯一無二のアイテムを表している、ブロックチェーン上の分割不可能なトークンです。NFTでは、デジタルアート、コレクタブル(収集物)、ゲーム内アイテム、および仮想世界の土地区画の真正性および所有権を証明できるため、急速に人気を集めています。SuperRareNifty GatewayおよびRaribleなどのNFT市場では、ETHを使用して様々な種類のコレクタブルを売買できますが、ステーブルコインの利用も増加しています。

超希少デジタルアート作品であり、NFT初期作品の一つ「CryptoPunk 2890」は、先日ETHで76万2,000ドルで売却されました。

執筆時点で、1億8,000万ドル以上の総販売額7を誇るNFTは、暗号通貨世界の特定分野で役立っていますが、それだけにとどまらず、NFTの新たなDeFiユースケースが誕生しています。NFTfiRocketなどのプロトコルでは、NFTがピア・ツー・ピア融資の担保として使用されており、NFT保有者は、暗号通貨として利用されているその他の資産と同じように、自身のデジタル・コレクタブルを利用することができます。

5. クロスチェーン担保が基盤を広げる

DeFi dappにおける担保展開の需要が高まるにつれて、DeFi領域に流動性を持ち込むための新たな方法も、出現してきています。この分野で特に重要な発展が、(1:1でBTCに裏付けられているERC20トークンを介して)イーサリアム上で拡大しているビットコインです。ラップド・ビットコイン(WBTC)8およびRenプロトコルの二つが、この例となります。WBTCは、トークン発行者がカストディで保有しているBTCを利用して発行されています(USDCのビットコイン版のようなもの)。Renプロトコルでは、イーサリアムでの利用を目的としてビットコインなどの暗号通貨をトークン化する際に、トラストレスなモデルが採用されています。最大かつ最も価値のある暗号通貨、ビットコインは、DeFiで利用できる可能性がある、膨大な量の潜在的流動性を有しています。例えば、約60億ドル相当の12万5,000BTC強が、現在WBTCとして流通しています。また、Renプロトコルにロックされた資産価値は、6ヶ月間でゼロから約10億ドルに到達しました。

DeFiでは他に何が起こっている?

  • CBDC:過去5年間にわたり、中央銀行および政府は、独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC; Central Bank Digital Currency)発行を目指し、ブロックチェーン技術の利点探求に勤しんできました。最も有名な中国のCBDCを初め、現在このような初期バージョンのCBDCが、試運転されています。他の国でも追随の準備が整っています。
  • 保険:分散型保険アプリには、 数十億ドル規模のこの業界に、透明性および効率性をもたらす潜在的可能性があります。スマートコントラクトの悪用から取引所のハッキングに至るまで、DeFi分野の様々な隠れた危険に対応した保険は、小さいながらも急速に拡大しているユースケースです。
  • 真のDAOの隆盛:分散型金融プロトコルが適切に実装された場合、それは、従来の中央集権的金融システムよりも安全かつ透明性が高く、効率的なものになるでしょう。DeFi分野が発展し、真に分散した運営への関心が高まるにつれて、本物のDAO(自律分散型組織)に向かって進むプロジェクトが増加していきます。

DeFiが輝く時

2020年におけるDeFiの発展では、将来性のある刺激的な分野が提示されました。DeFiが迅速に金融の将来を形作っていることが、今日ますます明確になってきています。ステーブルコインの可能性、拡大するNFTの普及、ならびに新たなスケーリングおよび流動性オプションが支えている新しいトレンドにより、このままのペースで行けば、今年もdappにとって目覚ましい一年になるでしょう。

Makerプロトコルが、DeFiアプリケーション稼働において果たしている役割について、是非学んでみましょう。

February 15, 2021