Makerコミュニティの次なる冒険
June 22, 2021
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8月19日および9月3日、Makerガバナンスで投票が行われた結果、ETHの債務上限を(3億4000万Daiから)5億4000万Daiに引き上げる提案が可決されました。MKR有権者がMakerプロトコルで担保として承認された資産の債務上限を引き上げた場合、必然的にDaiの債務上限も引き上げられます。そのため、現在Daiの債務上限は7億800万であり、既存のDaiの合計は4億2800万を超えています。
これら債務上限の引き上げは、7月上旬以降のDaiステーブルコインの需要の急激な増加、および手数料の未払いから生じた総債務の増加の結果、直近で承認された引き上げのひとつにしか過ぎません。当然のことながら、Makerプロトコル・パラメータへのこのような大きな変更は、広範囲の暗号通貨コミュニティ、および分散型金融(DeFi)エコシステムに興味を持っている人の好奇心を刺激しています。このような人々は、Dai債務上限について疑問を持ち、Makerプロトコル内での資産の債務上限の重要な役割、および調整方法ついて詳しく知りたいと思っているでしょう。この記事は、その好奇心に応えることを目的としています。
最も頻繁に尋ねられる質問に移る前に、最新のDai債務上限増加に至った様子を確認してみましょう。
Daiは世界初の公平な暗号通貨です。
過去数ヶ月間で、DeFiおよびMakerエコシステムへの顕著な注目が見られました。7月に、DeFi dappにロックされた総額(Total Value Locked; TVL)は2倍以上の40億ドル強となり、8月にはまたその2倍になりました。(記事執筆時の総額は80億2000万ドル)。その一方で、Daiの需要も増加しました。
公開市場でのDaiへの高い需要により、米ドルとのソフトペッグの完全性に課題が生じました。Dai価格は需給によって機能しているので、Makerガバナンスは、エグゼクティブ投票を行い、プロトコルが承認している様々な担保資産の債務上限を引き上げることで、この課題に取り組みました。ETHに関する最新の投票も、この一連の投票に含まれています。
以下は過去に例がないほどの規模で行われた、最新の債務上限アクティビティ、および2019年11月後半の複数担保型Dai(MCD)ローンチ直前以降のDai発行マイルストーン一覧です。
歴史的にも大規模のDai債務上限引き上げは、7月29日に行われ、MKR有権者は債務上限を5億6800万に引き上げることを可決しました。5億6800万という数字は、以下の担保資産の債務上限増加の合計を表しています。
8月7日にMKR有権者は、wBTCの債務上限を4000万から8000万まで、さらに引き上げることを可決しました。
8月19日にETHの債務上限は、3億4000万から4億2000万へ再び引き上げられました。
8月31日にUSDC-Aの債務上限は、1億4000万から4000万へ引き下げられました。
直近では、9月3日にETHの債務上限は、5億8800万から現在の7億800万へと再び引き上げられ、現在の総額6億8800万に至りました。
Daiの発行量は短期間で指数関数的に増えています。例えば、単数担保型Dai(SCD)ではローンチから1億を記録するまで、約23ヶ月かかっています。しかし2019年のMCDローンチ以降は、SCDよりも速いペースで主要なマイルストーンに到達しています。
1. Dai債務上限とは何ですか?
Makerプロトコルでは、異なる担保資産(例:ETH、BAT、USDCなど)に対して、発行できるDaiの量に上限があります。各資産にはそれぞれ独自の債務上限があります。Dai債務上限は、単純に、承認された全ての担保資産の債務上限の合計です。これらの数字は全てDaistats.comで見ることができます。
2. 誰が担保資産の債務上限を設定しますか?
MakerガバナンストークンであるMKRを持っている人のみ、債務上限変更に関する投票が行えます。有権者は、Daiの需要、およびそれぞれの資産に関連した様々なリスクなどを考慮しています。投票を行うかどうかは、週次Makerガバナンスコール、およびMakerフォーラムで議論が行われてから決定されます。投票は全て、ブロックチェーン上で行われているため、透明性が高いです。
各担保タイプにはそれぞれ債務上限が付与され、それによってDaiのペッグが維持され、全体的なリスクが可能な限り低く保たれています。リスクパラメータ(債務上限および清算率)が適切に設定されている限り、ほぼ全ての資産を担保タイプとして追加できます。担保資産がシステムのリスクに曝される度合いは、リスク評価モデルに応じて微調整されます。簡単に言うと、他の資産よりリスクが10倍が高いと判断された資産では、そのリスクに応じて債務上限は低くなります(リスクが少ないトークンの10分の1の債務上限)。
3. Dai債務上限はなぜ必要なのですか?
債務上限の役割は、プロトコル内のリスクを管理することです。異なる担保資産に対して発行できるDaiの総量の比率を調整することで、各資産に関連するリスクは限定的になります。無制限にDaiが発行できるようになってしまうと、リスクにも制限がなくなり、不安定になります。例えば、他の資産よりも比較的リスクが高いと判断された資産を担保にして、多くのDaiの発行ができてしまうと、許容量を超えたリスクがシステム全体にもたらされてしまいます。
4. 債務上限はDaiのペッグにどのような影響を与えますか?
Makerガバナンスは、Daiおよび担保資産の債務上限、安定化手数料(Maker Vaultに関連した変動レートの手数料)ならびにDai貯蓄率を含む、リスクパラメータおよびMakerプロトコル内の計器に頼って、Daiの米ドルとのソフトペッグを維持しています。これらの変数を個別にまたは組み合わせて増加および減少させることで、Daiの全体的な需給に影響を与えています。このDaiの需給のバランスが適切にとられていることで、ペッグが維持されます。
5. ある資産から発生したDaiの債務が、その資産の債務上限を超える可能性はありますか?
はい、あります。Maker Vault保有者に安定化手数料が課されているため、Dai債務上限が資産の債務上限を超える可能性はあります。端的に言えば、安定化手数料は継続的に発生するので、返済されるまでは抱えている債務が増えていきます。
Vaultに課された手数料により、ある資産に対して発行されたDaiの量が債務上限を超えている一例。
6. 担保タイプの債務上限に達したらどうなりますか?
ある担保資産の債務上限に達した場合、その資産に対してそれ以上Daiを発行することができなくなります。ユーザーは他の資産を担保にしてDaiを発行する、または公開市場でDaiを購入しなければなりませんが、公開市場での購入は、Daiのペッグを1ドル以上に押し上げてしまいます。
ユーザーは債務上限を超えてDaiを発行することはできません。
7. Dai債務上限に達した場合どうなりますか?
Dai債務上限は、全ての担保タイプに対して発行できるDaiの総量の上限を定めています。Dai債務上限に達した際にDaiを手に入れる唯一の方法は、公開市場での購入ですが、そうするとDaiのペッグを1ドル以上に押し上げてしまいます。
Daiのペッグは、Makerプロトコルを通じて、スマートコントラクトおよび分散型価格フィードのシステムによって維持され、異なる資産の債務上限およびリスクパラメータは、コミュニティ基盤のガバナンスプロセスを通じて決定されています。詳細についてはMakerプロトコルのホワイトペーパーをお読みください。
Makerフォーラムで議論に関与し、週次Makerガバナンスコールに参加することで、誰でもMakerガバナンスに参加できます。