新しいブロックチェーンアプリはどのようにDeFiを使いやすくしているのか
July 2, 2021
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分散型金融(DeFi)とは、ブロックチェーン分野において高い評価を受けている刺激的なムーブメントであり、そこでは過去2年間に目覚ましいイノベーションが起こり、その勢いは増してきています。2月にはDeFiプロジェクトにロックされた総額(Total Value Locked; TVL)が初めて10億ドルを超えました。 翌月にその値は元に戻りましたが、DeFiのTVLは今またその節目の数値を軽く超えています。1億ドルという数字は、従来の金融部門の基準から見ると比較的少額ですが、分散型技術が革新的で多様な商品およびサービスを推進する可能性を秘めていることは明らかです。そしてMakerプロトコルは、その最前線および中心地にあります。
DaiがDeFiで最も利用されている暗号通貨になったことで、Makerプロトコルの人気に火がつきました。しかし、ブロックチェーン技術の中でもDeFiは目まぐるしく変化している領域であるため、単にどのプロトコルがDeFiの地盤を築いているのかということだけでなく、既存のサービスはどのように利用されているのか、新しい商品はどこへ向かっているのか、そしてどのようなトレンドが起こっているのかという疑問が出てきます。
多くのトレンドおよび話題は、DeFiムーブメントの中から登場しています。以下で、これから数ヶ月間、さらにはそれ以降も目が離せない5つのトレンドを紹介します。
他のDeFiおよびスマートコントラクト・プラットフォーム(Tron、Binance Chain、Neo、Wavesなど)に一部の市場シェアを奪われているにもかかわらず、イーサリアム・ブロックチェーンがこれからもDeFi情勢の中心となるでしょう。ビットコインのライトニングネットワークを除く主要なDeFiプロトコルは全て、イーサリアム・ブロックチェーン上に構築され、常に新規のプロジェクトが追加されています。ETHのボラティリティをもってしても、DeFiのTVLの長期の上昇トレンドは損われないでしょう。DeFiにロックされたETHは、DeFiで使用されている全てのETHの割合を表しているため、議論の余地はあるかもしれませんが、DeFiにロックされている額の変動幅が大きいUSDの割合よりも、普及の度合いを示す良い指標となっています。現在DeFiにロックされているETHの量は、史上最高値の80%程です。
さらに、DeFi関連の複合トランザクションは、過去2年間で5倍になりました。イーサリアム分析会社のCovalentは、DeFiのトランザクションがETH単一のトランザクション数を上回る「フリップニング(flippening)」が起こると予想しています。
そして、 イーサリアム・ブロックチェーンおよびMakerプロトコルはコンポーザブル(構成可能)であり、これら両方の上に構築された新しいソリューションのおかげで、DeFiエコシステムは非常に有用なものになっています。コンポーザビリティ(構成可能性)は、ユーザーが増加するにつれて商品やサービスの価値も増していくという力強い現象である「ネットワーク効果」創出を促進しています。MakerプロトコルがDeFiのTVLの50%以上を占めているのは、ネットワーク効果のおかげです。現在までに600以上のプロジェクトが、Makerプロトコル上に構築されたアプリにMakerのDaiを組み込んでいます。
トレーダーがオン(ブロック)チェーンでのリスク回避や価値の保存方法を求めるようになり、ステーブルコインへの所望が高まり大きくなっています。大部分の供給がイーサリアム上でホストされている中央集権型ステーブルコインのテザー(Tether; USDT)が、数十億ドル規模でその支配力を維持しています。しかし、中央集権型で法定通貨に裏付けられたその他の代替コインが台頭してきています。それらは全てERC20トークンの形をとっています。
イーサリアム・ブロックチェーン自体は分散型であり、上記のトークンの移行やトレードは公開されていますが、その価値保存方法は中央集権型です。これらは全て、一つまたは複数の銀行口座にトークンを裏付ける資金を保有している組織が運営しているので、その価値が凍結されることや没収されることすら有り得ます。単に分散型インフラを利用すれば、全ての単一障害点が取り除かれるというわけではありません。
その点Daiは異なっています。Daiは公平で誰でもどこにいても利用可能で、中央機関のパラメータの枠組みに捉われていません。中央集権型ステーブルコインに相当な関心が集まっていますが、Daiは第一線に位置している分散型ステーブルコインで、DeFi領域で最も人気があります。Daiはオープンで安定性および検閲耐性があるので、ハイパーインフレを生き抜く手段としてラテンアメリカで人気を博しました。
Daiはラテンアメリカ中で、特にブラジル、コロンビアおよびアルゼンチンで人気を博しています。
ほんの一握りのDeFiプロジェクトとして始まったことが、主流の金融商品の分散型版の提供など、DeFi界で相次いでいる実験やイノベーションへと変わってきました。Daiは、これらのサービスをくっつける金融的「接着剤」だと考えてみてください。
Daiを利用すれば、誰でも米ドルの安定性にアクセスでき(これはアメリカ以外に住んでいる人にとっては必ずしも簡単なことではありません)、そのDaiをDeFi世界全体で使用できます。商品の一例として、低コストで迅速な国境を越えた価値の移転のようなシンプルなサービスなどがあります。(Daiは価値の転送に最適です。)また反対に、Daiは以下のようなさらに複雑なプロダクトにも組み込まれています。
上記のプロジェクトでは全て、DeFiでなければ手が届かないであろう商品に、ユーザーはアクセスすることができます。これから数ヶ月そして数年の間にDeFi分野で受け入れられる斬新で実験的なプロダクトの数は、ほぼ間違いなく増えていくでしょう。
「分散型レンディング・プロトコル」は、DeFi空間で今話題の新しい分野ですが、従来の金融業界のように無担保でローンを組めるようなものではありません。DeFiでの「借り手」は、大量の書類にサインして返済を保証する代わりに、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを介して暗号通貨を担保にします。このことによって借り手は、価値が上がると予想する暗号通貨を売り払うことなく、現金を日々の支出やトレードに自由に利用できます。市場動向の結果、担保が不足した場合、レンディング・プロトコルは即座に担保を清算します。 この分野のDeFiの人気が高まっています。
取引所は、中央集権型サービスまたは分散型サービスという別々の枠組みを超え、両方の枠組みのおいしい部分を兼ね備えた新しいプラットフォームが存在しています。DeFiのコンポーザビリティによって、企業および個人は両方のいいとこ取りができます。
トレーダーと様々なDEXを繫げるサービスであるアグリゲータは、複数のソースから同時に流動性への簡単なアクセスを提供しています。Uniswapのようなピア・ツー・コントラクト(Peer-to-Contract; P2C)では、従来のピア・ツー・ピア(Peer-to-Peer; P2P)アプローチを補完しています。P2Cモデルでは、ユーザーは需給に基づいて価格を自動的に計算するスマートコントラクトで売買を行います。これによりオーダーブックの必要性がなくなり、複雑さが軽減され、ユーザーエクスペリエンスが簡易化されます。
さらに、暗号通貨を手に入れたユーザーが即座にそれを使用できるように、取引所は他のサービスも組み込んでいます。2019年12月に、分散化取引所インフラの0xプロトコルがアップデートされ、ZRXトークンのステークが可能になりました。流動性アグリゲータ・プロトコルのKyberも、現在は同様です。そして、Oasis.appでは一元管理されたDeFiハブが用意され、ユーザーがDaiを発行しそのDaiを内蔵されたDEXで他のトークンに交換する、またはDEXでDaiを獲得しそのDaiをDai貯蓄率(DSR)にロックすることでさらなるDaiを得ることができる、使いやすいインターフェースが提供されています。
その一方で、中央主権型取引所も分散型プロトコルを取り入れています。Coinbaseウォレットでは、ユーザーにCompound(レンディング)およびdydX(信用取引)へのアクセスが提供され、OKExにはDai貯蓄率(DSR)が組み込まれています。中央集権型サービスが分散型機会へのアクセスを容易にするにつれて、中央集権型サービスと分散型サービスが一つのまとまりとしてのさらに一体を成すようになったことが上記の例で示され、それにより境界線がぼやけてきました。
DeFiは、前途有望なムーブメントであり、5年前のビットコインと同じ場所に現在位置しています。DeFiは勢いを増しつつありますが、未だ最も魅力的なユースケースを確立している途中です。DeFiに特有のトレンドが登場してきた一方で、その進化、実験および最終的な統合の過程には、おそらく何年もかかるでしょう。
MakerエコシステムおよびDaiを新しいDeFiアプリケーションに組み入れる方法を、ぜひご覧ください。