ブロックチェーンのブリッジとは?なぜDeFiに重要なのか?

March 29, 2021

著名なイーサリアムやビットコインに代表されるパブリック・ブロックチェーンとは、全ての人が閲覧可能なデジタル台帳です。しかし、全てのオンチェーン・データが公開されている一方、ブロックチェーンのインフラは、自己完結型のエコシステムをもたらしています。ブロックチェーンでは、共有されている台帳の安全性および正確性を保証するコンセンサスを維持できるよう、慎重にネットワークのルールに従うマイナーのみがトランザクションを検証し、ブロックチェーンに書き込めるようになっています。このような正当な理由から、設計上、自己完結的な作りになっています。

このシステムは非常に効果的ですが、自己完結型であるというブロックチェーンの性質により、ブロックチェーン業界全体が様々な機能や機会を提供しているにもかかわらず、DeFiユーザーは単一のネットワーク内に閉じ込められ、DeFiの進歩が妨げられている可能性があります。分散型金融アプリケーション(dapp)のレゴのような構成可能性が金融サービスの外観を変容させようとしている今、独立したブロックチェーン同士が「コミュニケーション」を図ることは、今まで以上に重要になっています。

PolkadotCosmosおよび Avalancheなど、クロスチェーン・インフラへの包括的ソリューションが人気を博していますが、単にデジタル資産をあるチェーンから他のチェーンへ動かし、dapps等のサービスをより効率的に使いたいと思っているだけのユーザーもたくさんいます。

そこで、ブロックチェーンのブリッジを見てみましょう。

ブロックチェーンのブリッジとは?どうやって機能する?

ブロックチェーンのブリッジにより、ビットコインとイーサリアム間のように大きく異なるネットワーク間での相互運用、およびペアレントチェーンとペアレントチェーンとは異なるコンセンサス・ルールの下稼働しているチャイルドチェーン間、またはペアレントチェーンとペアレントチェーンのセキュリティを引き継いでいるチャイルドチェーン(例:イーサリアム上のロールアップ)間での相互運用が可能になります1。チャイルドチェーンは、サイドチェーンとも呼ばれています。この相互運用性により、独立したプラットフォーム間でトークン、データ、さらにはスマートコントラクトの移動も可能になり、ユーザーは以下のことができるようになります。

  • あるブロックチェーン上にあるデジタル資産を他のチェーンのdappで展開
  • ブリッジを介さなければ規模拡大の難しいチェーンにあるトークンのトランザクションを、高速かつ低コストで実行
  • 複数のプラットフォームでdappを稼働

中央集権的なブロックチェーン・ブリッジもありますが、DeFiプロトコルのセキュリティおよび公開性保証に極めて重要な、分散性を維持しているものも存在しています。

ロックおよび発行:分散型ブリッジの根幹

分散型ブリッジを利用してあるブロックチェーンから他のブロックチェーンへ資産を移行する場合、移行する資産は、文字通り「移転」や「送付」されているわけではありません。実際には、2段階に別れたプロセスを経ています。まず最初に、移行させたい資産があるブロックチェーン上でスマートコントラクトを使用し、その資産をロックまたは「凍結」します。スマートコントラクトがサポートされていない場合は、他のメカニズムを使用します2。次に同量の新規トークンを、受け取る側のブロックチェーンで発行します。最初の資産を取り戻したい時は、発行されたトークンをバーンすることにより、最初の資産のロックが解除されます。このプロセスにより、どのような方法を用いても、二つのチェーンで同時に資産を利用することができなくなっています。

あるプラットフォームで資産をロックし、他のプラットフォームで同等の資産を発行することは、ブロックチェーンブリッジの中核機能です。

分散型ブロックチェーン・ブリッジの例として、Ren Protocol3を見てみましょう。イーサリアム・ネットワークが何千ものノードにサポートされているように、Ren仮想マシン(RenVM)も、コンセンサスを形成するデバイスで構成された、大規模な分散型ネットワークにサポートされています。機密情報が複数のデバイス間で共有されるため、マルチパーティ計算(MPC)を活用して暗号化された署名を共有することにより、ユーザーは、ネットワーク内のあるブロックチェーン上でデジタル資産をロックし、他のチェーンで同価値のデジタル資産を信頼不要な方法で発行できます。

この方法によりユーザーは、第三者の補助なしで、(理論上は)どのデジタル資産でもあるブロックチェーンから他のブロックチェーンへ「移動」できます。RenVMでは現在、イーサリアムおよびバイナンス・スマートチェーン上で、BTC、BCH、ZECおよびDOGEをサポートしています4

Renのデバでイスで構成された分散型ネットワークを利用することによりユーザーは、信頼なしで異なるブロックチェーン上で資産をロックおよび発行できます。

信頼基盤のソリューション

分散型のブロックチェーン・ブリッジよりも人気なのが、ビットコイン(BTC)ユーザーへイーサリアムの利点を提供している中央集権的アプローチ、ラップド・ビットコイン(wBTC; Wrapped Bitcoin)です。ユーザーは「merchant」と呼ばれるxBTCのパートナーを介して、信頼基盤(中央集権型)のカストディアンであり、機関投資家向けデジタル資産企業のBitGoが管理するウォレットへ、X分のビットコインを預け入れます。BitGoはそのBTCを安全保管し、同価値のwBTCトークンをイーサリアムで発行します。全てのwBTCは1:1でBTCに裏付けられているので、wBTCおよびBTCは、ほぼ同等の価値を有しています。最も重要なことに、wBTCはERC20トークンであるため、ビットコインとは異なり、Uniswap、Compound、AaveおよびMakerプロトコルなどのイーサリアムで人気dappにて、担保として利用可能です。

imBTCHBTCなどのラップド・ビットコインと同様のプロジェクトでは、自己完結型のブロックチェーン間での価値移動に付随する課題に対して、シンプルかつ効果的な解決策を提供しています。

サイドチェーン・ブリッジ

完全に異なる二つのブロックチェーンを繋ぐブリッジとは異なり、サイドチェーン・ブリッジではペアレントチェーン、およびそのチャイルドチェーンを接続しています。ペアレントチェーンおよびチャイルドチェーンは、異なるコンセンサス・ルールの下で稼働されているため、これらのコミュケーションにもブリッジが必要です。

この例の一つとして、人気ブロックチェーンゲーム、Axie Infinityの開発者たちは、Roninと呼ばれるイーサリアムに繋がった専用のサイドチェーンを作成しました。これにより、Axie Infinityは、イーサリアム・メインネットよりも大きな規模で拡大が可能になります5。Roninのユーザーは、Roninのイーサリアム・ブリッジにてETH、ERC20トークンおよびNFTをスマートコントラクトに預け入れます。そうするとRoninのバリデータが預け入れられた資産を受け取り、サイドチェーンへと中継します。

もう一つの例が、同じくイーサリアム基盤のサイドチェーンxDaiです6。Roninと同様にxDaiでも、イーサリアムのメインチェーンを維持しているマイナーとは異なるバリデータ達が、セキュリティを維持しています。xDai BridgeおよびOmniBridgeと呼ばれる二つのブリッジが、xDaiおよびイーサリアム・メインネットの架け橋となっており、これにより簡単にトークンが移送できます。

OmniBridgeでは、ユーザーはイーサリアム上でERC20トークンをロックし、同量のトークンをxDaiサイドチェーン上で発行できます。

サイドチェーンはまた、ロールアップの利用介して、イーサリアム2.0以降のネットワーク規模拡大においても重要な役割を果たすことになるでしょう。ロールアップとは、複数のサイドチェーンのトランザクションを一つのトランザクションにまとめ、メインチェーンでセキュリティを保証する方法を指しています。イーサリアムの共同創設者Vitalik Buterin氏は、このアプローチにより今後数ヶ月の間にトランザクション処理能力が100倍向上する可能性があると、先日公言しました7

DeFiへもたらされるブロックチェーン・ブリッジの利点

メインチェーンおよびサイドチェーン間の相互運用性をも含み、ブロックチェーンでの相互運用性が向上することにより、ユーザーは、今使っているチェーンの利点を犠牲にすることなく、各チェーンのメリットにアクセスすることが可能です。ブリッジにより、以下のような影響およびユースケースが生まれると考えられます。

  • クロスチェーン担保:ブリッジによりユーザーは、ビットコインのように多大な価値があるがdappsが少ないブロックチェーンから、イーサリアムのようにDeFiエコシステムが発展しており追加の流動性が必要なブロックチェーンへ、デジタル資産を移行可能です。
  • スケーラビリティ:多数のトランザクション処理ができるよう設計されているブリッジにより、開発者およびユーザーは、元々のチェーンの流動性およびネットワーク効果を断念することなく、より高度なスケーラビリティが実現できます。イーサリアム2.0の完全展開を待つ中、イーサリアム上でのネットワーク混雑問題が存続しているため、特に重要です。
  • 効率性ユーザーは高いガス代を支払うことなく、即座に少額の支払いおよび受け取りが可能です。これによりゲームおよびeコマース体験が向上します。

全てのチェーンの利点を享受

ブロックチェーン・ブリッジにより、ユーザーは、プラットフォームを選択することなく、異なるブロックチェーン技術の利点へアクセスすることが可能です。これにより、最も人気なDeFiネットワークであるイーサリアムの負担が軽減されるだけでなく、勝者総取りの考え方を強要せずに、他のエコシステムでのイノベーションを勧誘できます。

DeFi分野の最新重要開発を学ぶには、MakerDAOブログをご覧ください。

March 29, 2021